特定商取引法(特定商取引に関する法律、特商法とも、(制定時は訪問販売法))は1976年(昭和51年)、訪問販売等、業者と消費者の間におけるトラブルが生じやすい取引について、トラブルの回避・防止や、取引の公正性を図ることを目的として制定された法律です!
名称が特定商取引法に変わったのが2000年(平成12年)で、その後インターネットの普及など生活環境に合わせて数回改正が行われています。
ネット販売においては業者(個人事業主)としての出品はもちろん、個人でも仕入れて販売を行う場合など多数の商品を販売する場合や、ドロップシッピング形式での販売には、業者と同じく特定商取引法での規制対象になります。
(業者扱い・規制対象かどうかは販売側の認識に関係なく客観的に判断されます)
一方で、ヤフオクやメルカリでの業者や個人事業主(またはそれに準ずる副業実践者等)以外の出品は規制対象ではありませんが、特定商取引法に準じた記載を行うことはトラブルを防止するためにも効果があります。
ネット販売のルールとしての特定商取引法と、個人出品時にも記載・応用したい事項したい項目について説明します!
自身なりの意見として書いていますが、特商法を学んだ上で、評判の良い大手ショップやお気に入りのお店の書き方をアレンジする方法もありだと思います。
表示が必要な項目と誇大広告の禁止
特商法第十一条に関連して、消費者庁が掲載している項目より、ネット販売に関連している広告表示が必要な部分をピックアップしました。
・販売価格および送料(+数量等の販売条件)
・代金の支払い期限、方法、商品発送までの期間(※元払いの場合)
・注文のキャンセル可否および商品の返品可否と返品特約
(商品に隠れた瑕疵がある場合の対応)
・事業者の氏名(名称・責任者)、住所、電話番号(+メールアドレス)
通信販売でも条件によっては広告の表示事項を省略できる場合がありますが、オークションやネットショッピング形式など落札・購入と同時にお取引義務が生じたり支払いが完了する形式の販売方法においては通常該当しないため、原則は省略不可(消費者からは省略している側に問題があるかも・・・)と考えられています!
個人規模での運営の場合、自宅の住所・電話番号を記載したくないなどの理由から、特商法表記の欄にレンタルオフィスを使用する場合も見受けられますが、その場合は必ず「※記載の住所・電話番号が販売者個人ではないレンタルオフィス(契約店舗)等の住所であること、販売者個人情報は取引時に請求があれば遅滞なく事前に開示すること」を記載することが必要です!
いずれにせよ、広告において省略可能な項目があっても、最終的に商品の発送時や注文後のメールでの連絡の際には自宅の住所・電話番号も含め開示が必要です。
これらの広告表示に加え、特商法第十一条に関連して誇大広告等の禁止が定められており、著しく事実と相違する内容の広告による消費者トラブルを未然に防止するため、「著しく事実に相違する表示」や「実際のものより著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁止しています。
今回はこれら5つの項目について解説していきます!
販売価格および送料(+数量等の販売条件)
販売価格は(事業者は消費税込み、抜きの価格も含めて)誰もが提示するので、あまり問題になりませんが、送料込みかどうかや元払いor着払いに関しても正しく表示する場合があります。
数量等の販売条件は商品ページ等のシステム側で制限できる場合も多いので、併せて説明文に反映させるのが一般的です。
事業者の送料の表記例
・全国一律料金の場合
例:全国一律○○円(ヤマト運輸)
・地域別送料の場合
例:○○円(関東地方)、△△円(関西・東北地方)・・・(すべての地方)
・発送サイズならびに運送会社の料金表リンク
例:ヤマト運輸宅急便60サイズ東京発定価料金(料金表)
※料金表はフォーマットで定型文としておいて、サイズのみを商品に合わせて書き換える形でも問題ないと思います。
※リンクできる形式での記載が求められます。
他にも運送会社に指定がある場合や、落札者様の都合で好きなものを選択できる場合など様々ですが、最低限運送会社と発送サービスおよび料金が消費者側からも確認(想定)できることが求められているように感じます。
NG例とヤフオクやメルカリの場合
事業者・個人出品にかかわらずトラブルが多いのが多いのが、以下の2例です!
「小さな荷物に極端に高い送料」
例えば5、600円ほどで送れる荷物を全国一律2000円としている
「着払いで荷姿の想定サイズより2つも3つも大きなサイズで提供される」
空きスペースが多く、無駄に送料が高くなってしまう場合
ヤフオク個人やメルカリの場合、最低限以下の内容が確認できる記載にするとよいと思います。
・発送方法(未定でも送料込みでも、「お安い方法」で済ませず、補償・追跡番号有無は記載するとよい)
・送料が想定できる情報(箱のサイズ(60サイズ)や重さ、大きさ(定形外、その他方法))
メジャーやはかりがなく細かな区分が不明な場合は、1サイズ分送料を高く見積もっておき、その際の料金・根拠とともに差額が生じた場合に返金しない取り扱いとすることや、差出時に送料が決定するため、出品時の目安のサイズと送料が変動する可能性を記載しておけばOKだと思います。
送料目安となる情報が記載されていない場合は比較的多いですが、
目安送料が不明の場合には送料込みにしてしまえば、差額分は出品者自身に反映されるので、そういった方法もあります。
メルカリでもヤフオクでも送料込み(または一律)にした方がお取引自体はかんたんでスムーズです。
代金の支払い期限、方法、商品発送までの期間
説明の都合上、元払いでお取引する場合に関して説明します。
事業者の表記例
<支払い方法>
銀行振り込み:口座への入金確認後〇営業日以内に発送します
クレジットカード決済:承認確認後〇営業日以内に発送します
※発送までの期日は前日までに入金確認した商品を毎週火曜日、金曜日に発送いたします。といった方式でもOKと思われます
<お支払い期限>
注文日より~〇日以内等
※銀行振り込み時など必要に応じて記載
ヤフオクやメルカリの場合
支払い方法はかんたん決済だったり、メルカリ等フリマアプリ指定の方法になり自動で選択・表示できるのであまり気にしなくてOKだと思います。
一方で、入金期限や発送までの期間でトラブルになるまたはなりかけるケースは多いので、入金までの期限および発送までの期間(毎週〇曜日発送等)は記載しておくと良いでしょう。
メルカリは必須、ヤフオクは任意ですが大まかな発送までの日数が選択できます。
どんな取引でも7日以上経過する場合は遅いと思うかたが多いと思うので、出品前に特別な合意がない限りはできれば3日以内、遅くとも7日以の発送が暗黙のルールのようになっているように感じます。
何も情報がなく発送されない場合には不安に思う方もいるので、特に1週間近く発送までに時間がかかる場合には説明文に反映しておくと良いでしょう。
メルカリの場合は原則3日以内の対応が出品・購入側ともに求められているようです。
ヤフオクの場合お支払期限がその日の24時や24時間以内など極端に短い場合がありますが、よほどの期限のある商品以外は落札後3日~1週間前後を期限にしている方が一般的です。
キャンセル・返品可否と返品特約
販売側が事業者か個人かで異なってきます。
販売者側には返品の可否および返品時の条件や、商品に瑕疵(不良品・一見しただけでわからない隠れた不具合等)がある場合の販売業者の瑕疵担保責任についてあらかじめ記載しておく必要があります。
特商法第十五条にて記載されている内容では、商品のキャンセルに関して特約を表示していない場合には、商品を受け取った日から日から数えて8日間以内であれば消費者は消費者の費用・送料負担で事業者へ返品が可能になります。
隠れた瑕疵・瑕疵担保責任に関して特約がない場合には民法に従うことになります。(570条や566条などを参照)
事業者の表記例
<商品の返品について>
商品自体に問題がない場合:未使用の商品について、商品到着後1週間以内に限りお客様の送料負担にてお受けします
商品に問題(瑕疵)がある場合:商品到着後1週間以内にご連絡いただいた場合に限り、弊社の費用負担での返品・交換をお受けします
まとめて書く場合は以下のような場合も
商品の破損等不良個所がある場合を除き、返品返金には応じられません。
など、「消費者側の理由・都合で返品を申し出る場合」と「販売業者側の理由(提供商品の不良・瑕疵)での返品」についてそれぞれどういった対応を行うかを記載する必要があります!
書かれていない場合は、購入者都合の場合、特商法に従って8日間以内、瑕疵(不良品・一見しただけでわからない隠れた不具合等)に関する場合は民法に従い最大1年間が有効期限になります。
ただ瑕疵といっても、自然故障・劣化との違いを説明できないと認められにくくなってしまうので、多くの場合では1~2週間程度が限度とみられている側面もあるようです。
ヤフオクやメルカリの場合
返品不可やノークレームノーリターンとだけ書かれている説明文は多いのはないでしょうか?
(メルカリの場合はノークレームノーリターンの表記自体が禁止されています)
ここまでの文章を読んでいただければわかると思いますが、この表記だけでは購入した側の都合なのか、出品側(商品側)の問題かが不明ですね。
一般的には購入した側の都合の場合のみに対して意図している場合が多く、きちんとした説明文があって初めて効力があるように個人的には思います。
一方で説明文と異なる部分や瑕疵があった場合も含めると、価格と見合わない場合がほとんどになるので、ジャンクとして出品している場合以外は購入した側の都合の場合のみを対象とすることは取引全体も踏まえて総合的に判断できると思います。
個人間取引の場合には特定商取引法の制約はないため、良品のキャンセルについて記載がない場合でも購入者都合のキャンセルに関しては応じる必要はありません。
(出品する側の任意での対応になります)
返品を受ける場合にはあらかじめその条件を記載しておくと良いでしょう。
メルカリの場合は「キャンセル及び商品の瑕疵」という項目で以下の通り定められています。
本サービスの利用にあたり、出品後、及び商品の注文後のキャンセルはできないものとします。
商品に瑕疵がある場合、商品説明と実際の商品が明らかに異なる場合、梱包の不備により配送時に商品が破損したなどの場合は出品者が責任を負うものとし、出品者の責任及び費用により、返金、商品の引取、修理又は交換等の対応を行うものとします。(メルカリ規約 第11条5)
以上のことをまとめると、個人間取引では以下のようになります。
キャンセル・返品について
購入者都合の場合:応じる必要はない(返品を受ける場合は条件を明記しておくと丁寧)
※返品不可やノークレームノーリターンは不必要
出品者理由の場合:出品者側の責任および費用負担により対応が必要
※業者と同じようにとは求められないとしても、何かしらの対応を行う必要有
事業者の氏名、住所、電話番号
会社規模の場合以下のような項目の記載が必要です。
店舗名(○○株式会社)
代表者名
店舗などの業務地(および本店住所)
電話番号
担当者名
簡単にいうと、責任の所在と連絡先を記載することが法律で定められています。
これらの内容に加えて、ファックス番号、メールアドレス、ホームページURLや、営業時間及び休日に関する情報も記載されていることが一般的です!
個人で取引するときもほぼ同じで、責任の所在として最低限住所氏名、加えて電話番号の開示は必要です。
虚偽の情報を記載する方、記載しない方もおられるようですが、トラブル防止のために制定されている特商法のルールからすると、(正確な情報を)書かないことが逆に問題になっている面はあります。
受け取る側が元々の住所を開示したうえで私書籍あてに送付する場合はいいと思いますが、メルカリ便など匿名でのお取引は責任の所在がはっきりしないままのやり取りとなるので、相手に自身の個人情報を知られなくて済むというメリット点でありますが、責任逃れだったり、詐欺的な出品など悪い面への悪用を助長してしまう側面もあるので個人的にはあまりお勧めできない点でもあります。。。
誇大広告等の禁止
特商法第十二条に関連し、著しく事実と異なる説明文の記載や実際よりも有利である誤認させる説明文の記載が禁止されています!
特にネット販売においては、実物を見ることができないので、できる限りお店と同じように購入を判断できるように表記することが求められています。
良い例がほとんどと思いますので、悪い例のみ記載しておきたいと思います。
・新品と表記していて、明らかに使用された形跡がある
・傷・汚れ無しの記載で、実物に大きな傷、汚れがある
・届いた商品に無記載のたばこ臭・香水臭がある
・説明なく付属品が欠品していて、追加で入手しないと使用できない
・説明文が誤っており想定していた用途に使用できない
他にもあると思いますが、総じて良い状態への誤認が起こらないように記載、もしくは写真も含めての記載が必要になります。
説明は3行程度で簡単にでも30~40行程で丁寧に書いてもどちらでもOKですが、最低限価格に見合う価値があるかどうか、状態との相違がないかどうかの2点は気を付けると良いと思います。
個人的にはパソコンが好きなので一時期色々な方の出品説明を見る機会が多かったのですが、業者の出品はスペック+状態の説明に終始しているのに対し、個人の場合は業者のように説明している方に加え、スペックの一部のみ+主観での「サクサク動きます」といった感じで、商品によっては誤解を招くような状態のものもあるなと感じてしまいました。
サクサクといったあいまいな表現も誤解を生みやすいので、できれば数値などの客観的な判断ができる表現を使用するほうが良いでしょう!
まとめ
ネット販売時の特定商取引法での記載項目を5つの項目に分けて紹介しました!
個人間取引では業者が販売するほど厳密な表現は求められていないものの、必要な部分が欠落している説明文は多く見受けられます。
必ずしも丁寧な表現をする必要はないですが、取引に対して販売する際は相手に誤認識が起こらないように、正確な表現を心掛けると良いでしょう。
一番いいお手本は全国皆さんの売れた商品(および実績)や評価の良い出品者の説明文の書き方なので、参考にしながら自分自身に合った説明文を行うように心がけてください!