先日、週刊新潮およびデイリー新潮で、メルカリが泥棒市場と化している事例が報道されていました。
<参考記事>
・泥棒市場と化した「メルカリ」 万引き本800冊出品でも放置
・メルカリ、“盗品防止”の要請を一蹴 1000億円超上場も問われる姿勢
ある意味当然の成り行きのようにも思いますが、報道された内容や、自身がメルカリで体験した取引をもとに、今回の泥棒市場化について述べていきます。
万引き本がメルカリに大量出品されて発覚
はじめに、今回の記事のもととなる、デイリー新潮での記載内容について簡単に要約します。
<記事内容要約>
・徳島県内の書店チェーン「平惣(ひらそう)」で大量の万引き被害
・メルカリでの出品を平惣店員が発見し、出品者情報より万引き犯を特定
・万引き現行犯で逮捕後、犯人の自宅捜索で在庫の多くが被害品と同一
⇒万引き犯による窃盗の可能性が非常に高い状況
・メルカリ側は盗品出品防止のための警察庁の要請を蹴ったり、裁判のための情報開示に積極的でない
⇒法令遵守より儲けを優先していると思われるような姿勢
一番の問題は、万引き犯が盗品を売りさばいて収入を得ていたということなのですが、メルカリも法令遵守より儲けを優先しているという、姿勢が疑われるような状態と言われても仕方がないと述べられています。
ネット記事に先行して公開されていた週刊新潮での記事に対しては、メルカリが訂正と謝罪を求める抗議文を内容証明郵便で送付したとのお知らせを掲示していましたが、個人的には週刊新潮並びに被害にあった「平惣(ひらそう)」側の見解の方が信ぴょう性が高いように感じます。
ここ数年の統計では、小売店での万引き被害は年間4600億円ほど、振り込め詐欺の約10倍の被害額になっています。
盗品の換金はメルカリに限らず、ほかのサイトやリサイクルショップなどでも行われていると思いますが、取引が容易になったことで、今回の件と同じような盗品の出品がメルカリでも増えてきているのではないでしょうか。
匿名取引は安心・安全なのに法律に逆行
メルカリの特徴の1つが、らくらくメルカリ便での匿名取引(発送および受け取り)に対応していることで、「あんしん・あんぜんなお取引ができる」ことをサービスの売りにしています。
また、すべての取引でエスクローサービスを活用するため、購入者が受け取ってから評価できることもあってか、購入手続き完了時に出品者の個人情報が直接確認できないシステムになっています。
出品者は住所・名前(電話番号)を一切公開せずに取引することもできるため、盗品売却に限らず悪用の恐れから個人情報を公開せず取引したいユーザーも取り込んで、今日のメルカリでの売買が行われています。
ここで、ヤフオクの悪徳個人業者・個人出品者のよくある特徴と対比して、メルカリの特徴を整理します。
・住所が虚偽または途中まで
⇒住所を記載・公開せずとも取引が成立してしまう
・電話番号が開示されないor使用できない
⇒そもそも電話番号の開示義務がない
・メール等の連絡が途中で取れなくなる
⇒受け取り評価が完了すれば、後に不具合が発覚しても返金等は困難
個人情報を公開してないことを理由に積極的な対応を拒むケース有
(評価後は対応の問題を知らしめる術無し)
・販売側の対応に問題があれば評価機能で悪行が叩かれる
⇒評価前にキャンセルになった取引は、評価自体が行われない
一度評価が終われば、後に問題が発生しても評価変更できない
現状では、個人情報を公開せずとも取引可能で、匿名であることやシステムの関係上、対応の悪さや悪行が表沙汰になりにくいというのがメルカリの特徴の1つです。
このような状態では、評価さえ通過してしまえば出品者があまりリスクなく売り逃げしやすくなってしまうため、悪徳出品者にも有利に働いてしまう面があります。
ちなみに、営利目的で販売を行う場合、出品者の住所・氏名(個人・責任者名or会社・担当者名)・電話番号は特商法では開示が必須、ヤフオク!ではヤフオクのガイドラインや利用規約、未着・未入金トラブルお見舞い制度等で社会通念上通常求められる事項とされていることから、メルカリのあんしん・あんぜんが法律や社会通念からは逆行していると捉えることもできます。
記事の古本の場合、匿名発送サービスを利用されておらず結果として犯人の特定につながりましたが、犯人が匿名取引を利用していた場合、万引き犯の特定はより困難であったと思われます。
現実には小売店からの盗品と同じものを大量に出品していても、結果として匿名取引サービスが悪用され、見分けがつかずに対応が取れないケースも多いのではないでしょうか。
メルカリで体験した詐欺未遂のような体験
記事中では、メルカリは法令遵守より儲けを優先しているという疑いをもたれていましたが、自身も詐欺未遂と思われる取引にて思い当たる経験があります。
実際に、取引が成立しておらず最終的には返品となり、詐欺および詐欺罪未遂の構成要件に該当しない可能性もありますが、実際に2015年に経験した取引と、運営側の対応を紹介します。
<取引内容>
・アクチベーションロックのかかっていないApple端末として取引
・事前確認した内容や商品説明を削除し、商品を提供
・商品を受け取るも、封筒に出品者の住所・氏名が記載されず
・実際にはアクチベーションロックがかかっており事前説明と相違
※やり取りより、本人の所有物ではない可能性大(盗品や拾得物の可能性)
・不審な取引のため、運営へ警察への届け出が必要か確認するも、返品での指示
・キャンセルで取引終了も、相手の動向は取引画面削除で確認できず・・・
自身は取引でのやり取りから不安を覚え、出品者の住所・氏名すら記載されていないことから、意図的に盗品を売りつけられそうになったと、警察に相談に行くべき案件と感じました。
(実害はなく、相手方の住所も不明のため民事案件にされてしまい、相談で終わる可能性も高いですが・・・)
出品者と返品で話を進めている一方、相手の挙動が怪しかったのでメルカリ運営に警察へ相談に行くべきか問い合わせたところ、以下のようなメッセージが帰ってきて、運営の指示通り返品にて処理することとなりました。
当時のメルカリの対応には法令遵守より儲けや評判(場を荒らさないこと)を優先といった印象を受けたため、この出来事以来、メルカリで買いものすることはほとんどなくなりました。
ブランド品は比較的厳しく取り締まられている印象があり、現在は運営の状況も改善されているのかもしれませんが、すべての取引で厳重な取り締まりが行われているかというところでは、以前の運営体質や現行の取引システムからも疑問を感じてしまいます。
メルカリは盗品の出品にも便利?
最後に個人情報等を公開せずに販売したいという観点からみた、メルカリのメリットについてまとめます。
匿名発送で個人情報開示リスクがほとんどない
メルカリでは匿名発送が可能なため、返品となる場合を除き、個人情報を公開する必要がありません。
SMS認証も不正に行い、住所も虚偽のものを登録して、コンビニやヤマト運輸営業所に持ち込めば、送り主の個人情報特定は非常に困難です。
売上金の現金化のため、ゆうゆうメルカリ便発送の商品を購入し、匿名発送かつ郵便局などで受けとったり、転送届を組み合わせると直接銀行側にも、メルカリ側にも履歴が残らないので、悪用されるリスクは十分ありそうです。
カーナビやスマホなどシリアル番号・IMEI等が無くてもOK?
メルカリでは取引に慣れてない方も多数参加されているため、仕方がない部分もありますが、中古となるカーナビやスマホも、シリアル番号・IMEI等の記載がないものが多く見受けられます。
これら番号が記載されていれば、検索で該当する出品ページがヒットするため盗品の発見につながりやすくなります。
書き忘れや知識のない場合には、コメントすれば対応してくださる方も多いですが、中には個人情報保護を謳い非公開のままというかたもいらっしゃいます。
記載がなくても取引自体は無事完了できますが、ルールとしてIMEI番号やカーナビのシリアル番号の表記を義務付けているヤフオクなどと比較すると、盗品も出品しやすい環境なのではないかと感じます。
中古店に売却しても、ネット上に出品されれば最終的に身元が判明するので、匿名発送とともに都合の良い盗品の出品場所とも考えることができそうです。
商品情報は取引後2週間ほどで削除可能
こちらはメルカリに限ったことではないですが、メルカリの他、同じくフリマアプリのフリル、ラクマでも出品した商品情報は2週間で削除可能になります。
ヤフオクであれば4カ月近く商品ページが残り、また評価されれば出品者が出品した商品タイトルは4カ月を超えて残っていきますが、メルカリなどでは削除すれば過去の出品履歴をより早い段階で他者の目にはわからないように隠すことができます。
この点も、悪用する立場からすれば、時に専用出品による説明文消去なども含め、より都合の良い制度とも言えます。
まとめ
メルカリが泥棒市場と化していると報道がありましたが、メルカリのシステム上、盗品売買が起こりやすくなっていると感じています。
加えて、過去の自身の体験や、今回の報道の内容の通り、メルカリに対する印象にはあまり良いものはありません。
万引きなどの犯罪が減少するのが一番なのですが、換金に利用される恐れのあるメルカリでも、利便性ではなく盗品流通防止など法令順守の観点から対策が強化されることを期待したい。