最近相場変動の激しさ、特に2018年に入ってからは価格下落の方が注目されるビットコインですが、度々TVで特集が組まれるなど、保有資産(評価額)を大きく増やした方、億り人と呼ばれる方も紹介されるようになってきました。

ただし、利益が雑所得に分類されることから、ビットコインを日本円に換金することを踏まえて、ビットコイン長者について考えてみます。

ビットコイン利益への税率は最大55%

おそらくビットコインをはじめとした現在の日本での仮想通貨保有者の多くは、別に本業を持っており、片手間で仮想通貨取引を行っている、あるいは購入後放置して値上がりを期待しているというスタンスではないかと思います。

この場合(ほとんどのケースで)、ビットコイン等の仮想通貨取引による税金は雑所得に分類されます。

そして、ビットコインで得た利益に対する税金は、本業での収入に上乗せして加算されるため、年収で400万円台~500万円前後を超える場合、所得税10%+住民税10%の合計20%~税金がかかってきます。

課税される所得金額  税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超~330万円以下 10% 97500円
330万円超~695万円以下 20% 427500円
695万円超~900万円以下 23% 636000円
900万円超~1800万円以下 33% 1536000円
1800万円超~4000万円以下 40% 2796000円
4000万円超 45% 4796000円
ビットコインをはじめ、2017年は仮想通貨が何かと注目を集めています。 ビットコインが2017年10月で年初来の価格に対して7倍以上の値を付けたのをはじめ、ビットコイン以外の仮想

仮に課税所得が200万円の方が、わずかな元手のビットコインで財を成し、1年間でちょうど1億円の利益を得た場合、単純計算した税金額は利益の半分ほどで、5000万円を超えてきます。

特に長期保有で財を成した方の場合、ビットコインを日本円換算した場合の評価額で1億円前後というのは、実のところ預金が5000万円あるのと同程度という場合があるので、TVの報道で資産評価額が強調されることも多いですが、鵜呑みにはしていけません。

ビットコイン長者と聞くと、詐欺なり、胡散臭い方々がこぞって売買に参加しているイメージがある方もおられるかと思います。

実際に情報商材屋さんがセミナーを運営していたり、値動きが激しいために投機目的で売買する利用者が多いのも事実で、先ほどのような印象もある一面としては間違いではないと思います。

2017年の急激な価格上昇に伴って誕生し、TVでも報道されるビットコイン長者への印象を整理してみます。

<ビットコイン長者への印象>
・1年ほどの短期間で急激に誕生
・税金の関係で評価額ほどの資産価値が期待できない
胡散臭いように見える方々も多く、投資家らしくない雰囲気
・バブル、派手に騒いでる

2017年の1年間の間でビットコイン価格が急激に上昇したため、短期間で一気に資産が増えてリッチになった層もいると思いますが、1年のうちに税引き後利益で1億円稼ごうとすると、ざっくりとした計算で税率が20%の株の約1.78倍となる2.22億円もの利益が必要になります。

手元に残る金額以上にビットコインで得た税引き前の利益が注目されやすいので、自身は常に税引き後の利益でビットコイン関連の話題を考えるようにしています。

ビットコイン価格下落の資産への影響

2017年末、2018年に入ってからビットコインをはじめとした仮想通貨の急落が報道される機会が増えてきました。

常に上昇する局面では買って放置しておくだけでよいのですが、価格が急落して損失が生じた場合、同一年内の他の所得との損益通算ができないこと(赤字でも雑所得は0とみなすこと)や、年度をまたがっての損益通算による節税は不可能なので、株の取引と比較して、ビットコインなど仮想通貨での取引は税制上不利になることがあります。

例えば、年内にビットコインなどの仮想通貨取引での取引で、少ない元手から1億円の利益(税金約50%を後日要支払い)を確定したのち、翌年になった直後に手元にある税引き前の1億円でビットコインを取引していたところ50%の急落に見舞われた場合、一気に資産を失うことにもなりかねません。

もちろん税制を知っている方はこんな取引はせず、税金支払い用の現金を別に確保して取引すると思いますが、別の通貨へ乗り換えて知らずと利益を生み出しており、翌年になって急落に見舞われた場合、高い税金は支払うのに、手元に全く資産が残らないという状況もあり得ます。

また急落があっても、翌年以降に赤字となった影響を持ち越せ、場合によっては株主優待や配当、貸株による金利収入も期待できる株とは異なり、ビットコインなどの仮想通貨取引は赤字になっても利益が0未満にはならず、翌年への持越しもないので、価格下落が起こると売りが売りを呼ぶ状況になりやすく、資産が急激に減少することになります。

保有しているビットコインの大半を前年から持ち越して保有している場合には影響も軽微ですが、一度利益を確定した翌年に大幅な価格下落があると、2018年1月前半などのビットコイン相場急落に伴い、短期間で大きく資産を減らす可能性があるのも、またビットコイン長者の特徴の1つではないかと思います。

まとめ

TV番組などでのビットコイン長者が報道されるケースも増えてきていますが、注意してほしいのは以下の2点です。

・税率の関係で実際のビットコイン長者の資産は評価額の1/2程度の場合がある
(株や現金・預金での資産と必ずしも同等の評価はできない)

・税金+相場急落の影響で、大きく資産を失いやすい

一見、投資家として成功したように見える方でも、実はそうではなかった・・・ということのないように、ビットコインの特徴や税制を把握したうえで、身近な金融資産に置き換えての比較評価をお勧めします。