ビットコインをはじめ、2017年は仮想通貨が何かと注目を集めています。

ビットコインが2017年10月で年初来の価格に対して7倍以上の値を付けたのをはじめ、ビットコイン以外の仮想通貨(アルトコイン)には1年間の間に10倍以上となるものも存在するなど、値動きの幅が大きいのが多いのも特徴の1つです。

そんな折、2017年9月に国税庁のタックスアンサーにて、「ビットコイン(仮想通貨)を使用することで生じた利益は、原則として雑所得に区分される」と発表されました。

申告分離課税となる株取引での利益と比較しながら、ビットコインをはじめとした仮想通貨取引での利益に対する税金について考えます。

雑所得は損益通算不可で総合課税

現在の所得税法では、所得を10種類に区分しており、会社員として働いて得る給料は給与所得、自営業者として得る収入は事業所得の区分で税金の計算が行われます。

雑所得とは、9つ(利子、配当、不動産、事業、給与、退職、山林、譲渡、一時)の所得区分に該当しない所得をいいます。

会社員の方にとっての雑所得は、事業規模でないアフィリエイトや転売による収入など、小規模ながら自分自身で稼いだものをイメージするとわかりやすいかと思います。

ここで、主な所得と課税方式、損益通算の可否を表に整理します。

所得の種類 課税方式 損益通算
給与所得 総合課税 不可
不動産所得 総合課税 可能(除外項目有)
事業所得 総合課税 可能
雑所得 総合課税(FX以外)
分離課税(FX等)
不可
可能(雑所得内)
譲渡所得 分離課税(株等) 可能(譲渡所得内)

今回のビットコインをはじめとする仮想通貨は、申告分離課税となるFX等の税金とは異なり、一般の雑所得として課税が行われます。

総合課税かつ損益通算不可という点では給与所得と同じで、利益が出た場合には所得に応じた税金がかかってきます。

課税される所得金額  税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超~330万円以下 10% 97500円
330万円超~695万円以下 20% 427500円
695万円超~900万円以下 23% 636000円
900万円超~1800万円以下 33% 1536000円
1800万円超~4000万円以下 40% 2796000円
4000万円超 45% 4796000円

加えて、住民税が10%、自営業者等の場合には別途国民健康保険の所得割が10%強(目安:課税所得600万円前後まで)かかってきます。

給与所得者かつ単身者で控除される要素がほとんどない場合、課税される所得195万円は年収約440万円(会社員の平均年収より20万円前後多い程度)、330万円で年収約650万円に相当します。

目安として、会社員で平均的な収入を得ている場合には、ビットコイン等の売買での利益に対して20%~の税金が、所得税の税率が20%となる年収約650万円の場合には30%~の税金がかかってきます。

加えて雑所得のため、ビットコイン等の売買で赤字が生じた場合には損益通算ができないので、収支が-200万円でも‐2000万円でも、税金の計算上は0円として扱われるため、損益通算が可能な事業所得や、株の売買差益(譲渡所得)と比較すると不利な面も存在します。

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株取引での譲渡所得との比較

ビットコイン等の仮想通貨取引での税金・税制度と、株取引での場合との違いをまとめます。

項目 株取引 ビットコイン等
赤字の場合 赤字が生じた場合、確定申告を行うことで、3年以内まで株取引での黒字と損益通算可能 雑所得となる他の収入と合算して雑所得を計算できる。赤字の場合は収入0円とし、翌年以降の利益との損益通算不可。
所得税率10% 税率:約20% 税率:約20%
所得税率20% 税率:約30%
所得税率40% 税率:約50%

※税率は簡略表記のため復興特別税による加算分を除いています。

赤字の場合は、損益通算ができる・できないが大きな違いです。

株取引での赤字は3年以内までであれば翌年以降の黒字と相殺して税金を減らすことができるのに対し、雑所得となるビットコイン等の取引での収入の場合、相殺可能なのは年間の雑所得に分類される収入内のみにとどまり、赤字の持ち越しができません。

ビットコイン等の取引が赤字の場合、他の雑所得に分類される収入で利益がある場合には、相殺で所得を減らす効果があるため、赤字となった場合の税制度はそれぞれ異なります。

黒字の場合で、平均的な会社員の年収よりやや高い年収を得ている方の場合、給料に追加して得られる雑所得に対して最低でも20%の税金(うち所得税は10%)がかかってきます。

ビットコイン等の取引による雑所得(収入増加分)に対する所得税率が10%に収まる場合には、株での差益もビットコインの差益にかかる税率はともに20%なので、税金を考慮した差益には同じ価値があります。

一方で、元々年収が高い方、あるいは1年間で数千万円単位での大きな利益が出た場合、利益に対しての税率は20%、30%…と段階的に上がっていき、最大では所得税+住民税の合計で55%の税金が課されることになります。

それぞれの税率で100万円分の利益が生じた場合の税引き後利益と、税引き後利益で株取引と釣り合う収入の増加額についてについて表にまとめます。

合計税率例 税引き後利益 税引き後利益80万の収入
20% 80万円(株取引時) 100万円
30% 70万円(87.5%) 114.3万円(+14.3万円)
50% 50万円(62.5%) 160万円(+60万円)
55% 45万円(56.3%) 177.8万円(+77.8万円)

税率が上がるにつれて、だんだんと同じ税引き後利益を確保するために必要な収入は増えていきます。

株と同じ税率20%をベースにして、株の利益と同じ額の仮想通貨での利益を得た場合を考えると、税率30%の段階で利益が1割減、税率50%で約4割減となってしまいます。

仮想通貨が1年間で数倍になっていると報道されることもしばしば見聞きしますが、例えばビットコインが5倍になって1億ほどの含み益があったとしても、株式ベースで考えれば株の評価額が約3倍になったことに等しいという場合もあります。

ビットコイン等の売買での利益が雑所得扱いとなったことにより、大きな利益が生じた場合には株以上の税金がかかる場合があることを認識しておきましょう。

数年に分けて利益確定していけば税率を抑えることも可能ですが、事業所得・不動産投資等での赤字といった損益が計上できる所得がなければ、乱高下する仮想通貨へ資金を投下する魅力が削がれてしまうことにもなるので、稼ぐことともに税制度を理解しておくことは重要になります。

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ビットコイン等の取引で課税されるケース

最後にビットコイン等での取引で利益が生じ、課税対象となるタイミングについて紹介します。

取引所で売買して差益を得た場合

基本的には日本円で購入し、売却完了後に日本円として出金することになります。

こちらは購入~売却までが完了した段階で、取引前後の金額差が差益として扱われます。

最終的には取引に要した経費も含めて、所得計算が行われます。

ビットコインなどを支払いに利用した場合

ビットコインで支払いができる店舗はまだまだ少ないですが、ビックカメラ全店でビットコインでの支払いができるようになるなど、対応する店舗は徐々に増えてきています。

この際、ビットコインが使用されることで、利用したビットコイン分に関する利益が確定するので、対応する差益が課税対象となります。

わかりやすく言うと、株の評価額で直接買い物ができて、支払いに利用した株数に対する含み益は課税対象となりますといったところです。

同様にプリペイドカードであるバンドルカード等にチャージした場合も、その時点でビットコイン取引での利益が確定するために課税対象となります。

ビットコインで他の仮想通貨を購入した場合

日本円として受け取っていないので、一見して利益が確定していないようにも見えます。

一方で、最初に日本円でビットコインを10万円分購入し、価値が50万円となったところで全額をアルトコイン購入に使用した場合、元々日本円で購入したビットコインの売買に対する利益は50-10=40万円で確定します。

日本円に換金していないので課税対象外とする考えもあるようですが、ビットコインを利用して他の通貨を購入する行為も、先ほどの支払いに利用する場合と同じように使用とみなされるため、ビットコインを手放した時点で課税対象とみなされるようです。

なお、計算には売却時点での約定価格、ならびに日本円へ換算した場合の価格が用いて行われます。

まとめ

ビットコイン等の仮想通貨投資を行う際の、株取引と比較したメリットは以下の通りです。

<メリット>
・値動きが好調で、短期的な値上げ利益を期待できる
・事業所得等で赤字がある場合には税率が下がる
・所得が低い場合には株よりも若干税率が低くなる場合有

<デメリット>
・雑所得のため赤字時の損益通算が不可
・累進課税のため株よりも高い税率がかかることが多い

個人的に注意してほしいのが、所得が高い場合の税率です。

株投資での含み益に対し、仮想通貨の場合の含み益の場合には税金まで考慮すると10%、場合によっては40%近く価値が目減りしてしまうので、投資するうえでの利益は申告分離課税の株やFXで稼ぐ場合と異なってきます。

税金・税率は一人ひとり異なってきますので、雑所得での税制度も踏まえて売買されてみてはいかがでしょうか。