コインチェック社でのNEM流失騒動や、海外でのビットコインに関連するテザー問題等で、ここ数日の仮想通貨全般の変動幅(ボラティリティ)が高くなっています。

コインチェック社のNEM騒動に関して、金融庁が2/2に立ち入りを行うなど検査・捜査も進んでいますが、NEM以外の仮想通貨や日本円の返金は依然として未定状態のままです。

NEM流失に関しても現預金などで返金可能としていますが、仮に返金できたとしても、また許可が下りて事業を継続できたとしても、存続が困難と考えられる可能性について紹介します。

NEM流失はコインチェック社にも責任有!?

今回のNEM流失事件でポイントとなると思われるのが、コインチェック社側の管理体制です。

杜撰な管理体制と報道されたり、技術面の難しさや人材不足により推奨されるセキュリティ体制とっていなかったとコインチェック社側が説明しているなど、コインチェック社側に不備があったのは事実です。

コインチェック社の利用規約上には、「いかなる場合にも責任を負わない(保証及びいかなる責任(瑕疵担保責任)が免責)」と書かれていましたが、単純にユーザーの認識に反した管理が行われていたのであれば、コインチェック社側に責任を問えるケースになりそうです。

すでに「コインチェック被害対策弁護団」によって、NEM保有者を対象にした訴訟準備が進められており、早期解決となればよいのですが、現状は解決までに時間がかかりそうな状況となっています。

現時点まででは、NEM相当額を日本円で返金予定とコインチェック社側が発表していますが、返金・損害賠償等での利用者への金銭支払いの対象となるのは、大きく分類して以下の3つの項目かと思われます。

・NEM流失にともなう直接の損害(訴訟準備中)
・仮想通貨売買ができないことに伴う価格下落等での損害
・出金が遅れることによる遅延損害

コインチェック社の対応次第では、今後、コインチェック社側の帰責事由に伴い、仮想通貨売買や日本円出金を停止させたことによる被害に対する責任に対しても追及・訴訟が起こるものと思われます。

2018年1月26日にコインチェック株式会社にて、取り扱い仮想通貨の1つであるNEM(ネム、XEM)の流失騒動が発生しました。 原因究明や対策は、資金決済に関する法律に基づく行政

コインチェック社側の返金の意思

コインチェック社側は、全額に相当する約460億円を返金するとしていますが、利用者目線からすれば返金時期の案内もなければ、返済原資の根拠すら開示していないなど、返金する意思があるのか疑問に思う部分です。

加えて、返金額計算の根拠となるNEMの算出価格が、流失が発覚してコインチェック社が発表した時点~約35時間の他取引所での相場価格をもとに計算されており、単純に流失時点での時価総額約580億円と約120億円、保有時のNEMの日本円相当額に対して20%ほど安価な価格での返金であるのも腑に落ちない部分です。

個人的には、(返金できるかどうかわからないけど)とりあえず返金の意思を示すために計算したもの、あるいは全ユーザーに対して満額の返金をしていては支払額が膨れ上がるので、流失時の時価の80%での返金でも納得してくれるユーザー・100%での返金をあきらめてくれるユーザー(弱者)を狙ったもののように思えてしまいます。

今回のケースではNEM保有者がNEM流失の直接の被害者であることはもちろんですが、売買停止に伴う仮想通貨全般の価格下落による損害、日本円が出金できないことによる遅延損害もあるので、現預金が十分にあるのであればすでに一部でも返金・出金が可能になっていると思われます。

現在出金の見通しが立っていないのは、破産手続き予定で偏頗弁済とならないために出金を停止しているという考えもあり、コインチェック社側が今回の騒動に対して返金を行うかは疑わしいところです。

また、出金が遅れることによる遅延損害を請求する場合には、利用者側の請求(出金を希望する意思表示)が必要になるため、債務不履行・履行遅延(支払遅延)での内容証明を送った方がよいとされる考えもありますが、返金する意思がない場合・返金できない場合にはあまり効果がないので、送ったところであまり意味がないとの見方もできます。

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仮想通貨の価格変動次第では倒産も

NEMに対して発表している460億円はもちろんですが、ほかにもNEM流失に伴い他の仮想通貨の売買を停止していること、並びに日本円の出金が停止していることは、今後のコインチェック社の損害を拡大させることにつながります。

特に仮想通貨の価格変動は不安要素も大きく、2/3時点ではNEMだけを見ても流失時の価格の半分近くまで下落するタイミングがあるなど、2017年までのようにほぼ右肩上がりといった状況にはありません。

とすると、1週間ないしはもっと長い期間の取引停止の間の仮想通貨の価格変動により、ユーザーの仮想通貨評価額が下がって巨額の損害が発生する可能性が考えられます。

過去には、倒産・業務停止後にビットコイン価格が上昇したために、損害額全額に相当する支払いができた例もありますが、一時的に全顧客資産の10%、20%といった額を弁済する能力は資本金1億円程度のコインチェック社にはないと思われますので、最終的に返金がされるかどうかは別として、倒産となる可能性が高いと思われます。

加えて、NEM保有者だけで26万人、他の仮想通貨保有者も含めるとさらに多くの被害者の中から起こると思われる、損害賠償請求や訴訟にかかる人員や費用などを考えると、従業員数が100人未満のコインチェック社存続があまり現実的ではありません。

いずれにせよ、早期の解決を期待したいところです。

まとめ

コインチェック社のNEM流出騒動について、ここ最近の仮想通貨による価格変動や、コインチェック社による出金等のサービス再開の見通しが立たないことについて、存続が困難と考えられる可能性を紹介しました。

2017年末~2018年頭にかけて取引額が急上昇したために、かなり儲かっていたという見方もあるので、倒産が確定したわけではありませんが、今後の対応のためにも、早期の再開または倒産の決定がなされることに期待したい。