連日不動産バブルや空き家率の上昇が報道されている一方、金利が下がった影響もあり、副業で給料とは別に副収入を得るため不動産投資を考えている方は依然多いのではないかと思います。

物件価格の半分を超える十分な自己資金がある場合、安定した収入を確保するうえでは大きく問題になることは少ないですが、レバレッジを利かせるため多額のローンを組んで投資している場合、毎月・毎年の赤字(持ち出し)が原因となって不動産投資が失敗に終わるケースも出てきているようです。

損益通算による節税や、生命保険代わり(ローンの団信によるもの)に赤字のまま保有している場合もあるようですが、不動産投資を事業として考えた場合の運営について取り上げます。

自身の投資と利回りへの考え方

投資とは?簡単に言い表すと

「将来の利益を得るため、現在の資本を事業などに投下すること」

ということができます。

自身の場合は魚釣りに例えて、「お金を餌(元手)に、お金を釣る(稼ぐ)こと。時には釣り糸が切れる(損失を被る)こともある。」というイメージもっています。

要するに資本を投下した分、それに見合ったリターンが欲しいということです。

基準は投資の対象物で異なると思いますが、自身は株式投資、とりわけ株主優待による運用が基準なので、年間利回りが5%が1つの基準になります。

2016年1月、日銀の「マイナス金利」の影響を受け、2016年5月現在での一般的な銀行の普通預金金利が0.02%→0.001%となっています。 100万円を1年間運用するとたったの

さらに値動きの激しい株の売買による差益で稼ぐ場合は、1日で元々の株の評価額に対して10%以上値上がりすることも珍しくはありませんが、他方で10%値下がりするリスクも存在するため、安定性に欠けるというのが自身のイメージです。

太陽光発電では10%越えの案件も出回っているようで、一見してこちらの方がお得に見えますが、太陽光発電関連企業の倒産が相次いでいることから、リスクもそれなりにあると考えるのが自然かもしれません。

FXで大きく稼げるスキルを身に着けている方は、5%~10%前後の投資案件がバカバカしく感じられるかもしれません。

いずれにせよ、不動産や株などの金融商品への投資の場合、年間5%~10%の利回りが投下した資本に対して得られれば十分という考えです。

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不動産投資の毎月赤字は失敗?

これも立場によりけりですが、必ずしも現金の収支で毎月赤字が出ることが失敗とはなりません。

例えば購入後、1、2年たった段階で売却し売買差益も含めたトータルの収支がプラスになるケースです。

1000万円で購入でき、数年内に1500万円で売却できるようなキャピタルゲインが狙える物件であれば、毎月の収支が赤字になったとしてもあまり気にする必要はないでしょう。

一方で毎月の家賃収入(インカムゲイン)で安定したキャッシュフロー(+収支)を求める場合、原則として黒字(現金収支がプラス)での運営が基本になります。(戦略的に減価償却費で帳簿上の赤字を出し、所得税の還付で埋め合わせをする方法もあるようです)

これは投資を行い、毎年一定のリターンを得ながら同時に資産も構築できるからです。

不動産収入を確保しながら、繰り上げ返済もしくは物件の買い増しを行えば、プラスのキャッシュフローを得たことにより資産構築のスピードが加速することになります。

ただし、少ない元手でキャッシュフローを得るために借り入れを行う場合、借入金に対する多額の金利を支払う必要があるというデメリットもあります。

その支払金利の額を下げる方法の1つとして返済期間を短くし、返済における元本の金額を多くするという方法をとることもできます。

この場合、キャッシュフローが黒字の場合と比較して、手元に残る金額は下がる、もしくは赤字になることもありますが、帳簿上の収支は借入金の金利部分の金額が低下する分改善するでしょう。

トータルでの金利(経費)支払いを抑えることができるので、青色申告などで課税対象となる所得額を下げることができれば、キャッシュフローが赤字でもトータルの利益が増える場合もあります。

投資なので毎月のリターンに目が行きがちですが、物件を売却して資金を投下する前に戻してはじめて利益が確定するので、必ずしもキャッシュフローが赤字なことが悪いとも限りません。

毎月意図的にキャッシュフローを赤字にしていても、良い投資の場合、プラスのキャッシュフローで運用できる場合がほとんどではないでしょうか?

個人的に成功・失敗の目安の1つがプラスのキャッシュフローで不動産投資を開始できることではないかと考えています。

毎月赤字で失敗なのはこんなケース?

単純に考えると、帳簿上も収支上も赤字となり、売却してもローンを回収できないどうしようもない状態が思い浮かんできます。

もっと簡単に考えて、赤字で失敗といえるケースを見ていきたいと思います。

空室の影響で想定していた家賃収入が得られない場合

単純に満室であれば得られるはずの収入が得られないということです。

経営上の問題もあると思いますが、空室による赤字の場合は挽回可能な場合もあり、単純に失敗と言い切ることはできません。

帳簿上も収支上も赤字となる場合もありますが、失敗といえるのは最終的に空室を埋めることができない(黒字化できない)場合に限られます。

家賃下落や修繕費で持ち出し分が完済時の物件価格を上回る場合

こちらはわかりやすく、月々の収支が赤字になっている場合です。

ローンの完済間近で赤字に転落してきた程度であればあまり気にする必要はないと思いますが、問題なのは、ローンを組んだ時点で赤字という場合です。(新築のワンルームに特に多いようです)

ローンを早く完済するために持ち出しをする場合は大きな問題がないと思いますが、いずれの場合も収支の総額がローン完済時点での物件価格を上回らないと、投資としての価値が薄れてしまいます。

例えばローン完済後売却して800万円が手元に残る物件を、1000万円を先払いして積み立てしているような状態を考えるとわかりやすいかと思います。

総額1000万円を積み立てて、大きく資産が増えるあてもなく、逆に元本割れをする商品・・・

ここまでくると売却という選択肢も出てきますが、利益の取れない物件の価値は当然下がるので、売却してもローン残債が残ることも多いようです。

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赤字による所得・住民税の節税額

自身の所有する物件情報を元に、ぎりぎり赤字を想定したシミュレーションをしてみます。

保有物件に関しては以下のページを参照ください。

2015年、退職直前のサラリーマン時代に開始した都内中古ワンルームマンション投資の物件情報、1年目、2年目の収支について紹介します。 現在の所有物件情報 自身が所有している物

管理費など大まかなシミュレーションに使用する諸条件についてまとめます。

 項目 詳細
所有物件 ローン残債:1900万円(完済まで33年)
完済後の物件価格:800万円
減価償却費:32万円(SRC・築10年前後・定額法)
月額賃料 平均72000円(82000⇒62000)
(1年目:82000円、17年目:72000円)
ローン返済 月々返済額:7万円  ※元利均等
1年目、17年目の金利割合:55%、33%
(土地部分の金利割合40%)
ローン以外の経費等 22000円/月(管理費や税金込)
月々収支 -2万円(完済までの平均値)
年間収支 -24万円(完済までの平均値)
(-12万円(1年目)、-24万円(17年目))

これらの条件を利用して1年目、17年目の所得上の収支を計算していきます。

 項目 1年目所得 17年目所得
営業収入-ローン以外の経費 72万円 60万円
減価償却費 -32万円 -32万円
借入金金利部分 -46万円 -27.7万円
赤字の土地金利部分 +6万円
(最大18.5万円)
なし
(最大11.1万円)
合計 0円 3000円

この結果、いずれもただ単に赤字を出しただけでは、所得上の赤字にはならないという結果になりました。

この状態で空室が続き売り上げに相当する家賃が入らなければ、所得上も赤字になりますが、その場合は手元の資金から埋め合わせを行い、損失を補てんしていることになります。

最後に積算して埋め合わせを行った金額を、ローン完済時の物件価格と比較します。

赤字額合計=24×33=792万円となります。

その時点での物件価格が800万円であれば、投資効果はほとんどないことになります。(手数料などは省略して考えています)

収支トントンであればまだましなほうだと思いますが、当初のローン完済時点の物件の購入価格以上に資金をつぎ込んでいる場合、運営が失敗しているといえるでしょう。

所得上の赤字が継続している発生している場合、おそらく資産の増加以上に金利をはじめとした経費が掛かってしまっているので、この部分が赤字運営は失敗といわれている原因ではないかと思います。

所得がプラスであれば税制上の優遇も受けることができるので、できればキャッシュフロー、所得共にプラスでの運営を考えたいものです。

まとめ

不動産投資での運営の考え方をまとめてみました。

トータルの期間を通じて利益を目指すのが投資なので、今現在の収支とともに、ローン返済時点での収支が投資の結果を判断する1つの指標ではないかと思います。

副業ブームで不動産投資も過熱気味と言われていますが、投資をする本来の目的は見失わないように、安定した運営を行うのが現在の目標です。

初心者の安易な参入も広がっているようですが、不動産投資をするかどうかは投資する本人の意思で決めるものなので、納得して運用をするかどうかを判断できる知識を身に着けておくことをお勧めします。