会社員時代は税金や年金・保険料が自動的に徴収されるため、あまり実感していませんでしたが、個人事業主になって自分で納付する立場になると、毎月の支払額が実感できます。

開業して自分自身で事業を営んでいる場合、個人事業主ならではの節税方法をうまく活用することで、毎月の税金類の支払額を抑え、経費などに活用することが可能です。

確定申告における青色申告者(事業規模の場合)、とりわけ脱サラして一時的に失業した後に開業する場合に焦点を合わせて紹介します。
(副業で開業している場合にも部分的に利用可能です)

事業・不動産所得の損益通算による節税

会社から支払われる給料(給与所得)と、事業・不動産所得の大きな違いは赤字の場合に他の所得と損益通算が可能かどうかということです。

事業・不動産所得に関しては赤字となった場合でも給与所得より差し引いて所得を計算することが可能です。

例えば給与所得が500万円、事業所得が100万円の赤字であった場合、合算したのちの400万円を所得として税金の計算が行われます。

事業所得も不動産所得も基本は黒字のために行いますが、所得を得るためにかかった費用を経費として計上することにより、帳簿上の赤字を出すことによって節税が可能です。

脱サラした年に給与所得がある場合、事業・不動産所得の赤字分を含めて確定申告することで所得税の還付が受けられるとともに、翌年の地方税、国民健康保険(税)を減らせます。

サラリーマンの副業の場合、納税者の意思で事業所得とはならず、損益通算できない雑所得とみなされる場合もあります。

政府が「働き方改革」として正社員の副業を後押ししていることや、副業を容認する企業が増えてきていることもあり、今後副業に取り組む方が増加する傾向にあると思われます。 副業を始める理

ただ単に帳簿上の赤字を出して税金が安くなるシステムではないので、副業で収入を得ていても事業所得か雑所得かの曖昧な位置にいる場合は、税務署や税理士といった専門家へ相談するのが適切です。

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青色申告特別控除制度による節税

複式簿記(会計ソフト利用)等で記帳していることや、貸借対照表及び損益計算書を添付して法定申告期限内に提出するなど一定の条件がありますが、条件を満たすことで事業所得・不動産所得より最大で65万円の控除を受けることができます。

結果として青色申告で控除を受けた最大65万円分に対しての所得税、地方税、国民健康保険(税)が節税にできます。

所得税、地方税、国民健康保険(税)で所得の30%が税金・保険料となる場合、約20万円の節税効果があります。

なお脱サラし、はじめて青色申告特別控除を受ける場合には、提出時の条件に加えて青色申告承認申請書の事前提出が必要になります。

<青色申告の申請手続き>
青色申告する年の3/15まで、または開業後2か月以内に納税地の所轄税務署長へ提出

税務署へ行って、職員の方に青色申告をしたいと告げれば書き方も含めて案内してくださいます。

<自身の失敗談:不動産所得がある場合は注意>
所有するのは2物件のみで、5棟10部屋の事業的規模ではなかったので、後日個人事業を開始した段階で開業届の提出とともに青色申告の申請手続きをしに管轄の税務署へ行きました。

担当職員とやり取りしていると、投資用不動産を所有し賃料収入を得た時点で税務上の「不動産貸付業」を開始したことになるため、事業所得を得るようになった段階ではなく事業所得・不動産所得のいずれかを得るようになった段階が青色申告の申請手続きの起点となるようです。

自身は事業所得を得る段階が開業と思っていたので、面食らった形となってしまいました。

1回目の青色申告を逃す形となりましたが、特別控除を受ける所得もない状態だったので影響は出ませんでした。

場合によっては10万円以上納税額が変わってくるので、開業後課税される事業・不動産所得が見込まれる場合には、期限内に忘れず手続きを行いましょう。

<赤字の場合には節税策にはならない・・・>
自身は赤字になった場合でも、青色申告控除の65万円が適用されると思っていた時期がありました・・・

青色申告控除が効果を発揮するのは黒字の部分の65万円までとなります。

以下の表は控除額の計算例です。

事業所得 控除後所得 (控除額)
40万円 0円 (40万円)
100万円 35万円 (65万円)

なお、不動産所得と事業所得の青色控除は別々に適用されます。(不動産所得が優先されます)

青色控除前の事業所得が100万円の赤字、不動産所得が50万円のプラスの場合を以下の表にまとめます。

事業+不動産所得 事業所得 (控除額) 不動産所得 (控除額)
-100万円 -100万円 (0円) 0円 (50万円)

※表の事業所得、不動産所得は青色控除後の数値

この場合、単純に不動産所得と事業所得を足し合わせると-50万円となりますが、青色申告控除後の所得を足し合わせると-100万円となり、損益通算できる金額がより大きくなります。

不動産所得と事業所得の全体で赤字があっても、片方が黒字の場合には青色申告のメリットを受けられます。

なお不動産投資用の資金を借入している場合、不動産所得が赤字であれば土地部分の借入金金利が経費算入できないため、節税の観点からは事業所得で赤字を出す方がよりメリットがあります。

不動産借入金利に関しては以下の記事にて紹介しています。

連日不動産バブルや空き家率の上昇が報道されている一方、金利が下がった影響もあり、副業で給料とは別に副収入を得るため不動産投資を考えている方は依然多いのではないかと思います。 物件

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少額減価償却資産の一括経費算入による節税

青色申告する個人事業主規模の場合、取得金額が10万円以上30万未満の減価償却資産に関しては、年間合計300万円まで一括で経費とすることが可能です。(青色申告をしない場合、10万円を超える物品類の購入時に減価償却が必要)

例えば、10月に新品の20万円のパソコンを購入した場合、通常の減価償却の方法に従えば、耐用年数4年、使用期間3カ月より、20÷4×3/12=1.25(万円)、すなはち1万2500円が経費算入可能な金額となります。

一方で少額減価償却資産に関する特例を利用することで、20万円すべてを経費(法人の場合は損金)とすることが可能です。

利益が多く出る年の後半に都合よく経費計上できるので、節税のためのテクニックの1つとして活用できます。

逆に利益が出ずに全額を経費計上したくない場合には、通常の減価償却で来年以降の経費とすることも可能で、柔軟な処理が可能となります。

開業費の任意償却による節税

個人開業する際、色々と準備を行ったり、必要な備品などを買いそろえるために支出(消費)した費用は開業費(繰延資産)として経費になります。

この開業費に関しては、5年で均等償却または任意償却のいずれかの方法にて計算することが求められます。

初年度から安定して利益を出せる場合は、5年間で均等償却する方法でも問題ありませんが、節税上メリットが大きいのは任意償却できる後者の方です。

この任意償却をうまく活用できれば、所得額を調整することができ、事業の収益に応じて開業費を経費にすることができます。

脱サラした場合、給与所得と相殺するために開業費を多く計上して事業所得を赤字して独立翌年の税金を減らすことができるので、独立直後で収益が安定していない場合には有効な手段です。

還付を受ける所得税も場合によっては10万、20万単位になるので、開業前に使用した経費は忘れずに計上しましょう。

また、将来的な節税のために繰延資産として残しておき、利益が出たタイミングで経費とすることもできます。

青色申告控除や基礎控除、社会保険控除などの金額を踏まえたうえで利用するかどうか決めることができるので、年末もしくは確定申告の時期に調整する経費と考えておいて良いと思います。

赤字の繰り越し(繰越損失)による節税

開業し、準備するために費用がかかったものの、売り上げがあまりなく所得が赤字となった場合には、青色申告時に限り最大3年間繰越損失により、翌年度以降の黒字分と相殺することで節税が可能になります。

赤字の場合、青色申告控除の65万円や、基礎控除の38万円分などの各種控除は受けられず無駄にはなってしまいますが、やむ終えず生じてしまった赤字を繰り越すことで翌年以降の黒字と相殺することが可能です。

相殺される所得は、青色申告後の所得額に対して適用されます。

1年目に100万円の赤字が発生し、2年目に200万円の黒字(青色申告での65万円控除後:135万円)が発生した場合、差し引き35万円が所得金額となります。

各種控除の関係から、前年度の青色申告した際の黒字と相殺する場合を除き、開業費の全額計上などで積極的に赤字にする必要はないので、あくまでも赤字が出てしまった場合の処置という位置づけになります。(理想は各種控除を反映後課税所得がちょうど0になるような状態)

この場合は損失の繰越を行う期間、連続して青色申告を行うことが条件となるので、青色申告前提での節税策となります。

失業による年金の特例免除制度の活用

社会保険の控除対象となる国民年金について、脱サラ後に失業期間を経て開業する場合には、失業による特例免除の申請を行うことが可能です。

特例免除が可能な期間は、失業後2年間分で、その間は失業後の申請者の所得が0であるとして審査が行われます。

単身世帯の場合、失業した事実があり特例の区分で申請すれば、問題なく免除になるかと思われます。

免除が認められた場合、支払いは必要なく、その期間は年金の加入期間として扱われますが、免除期間に対して支給される年金額は通常の1/2となります。

年間で20万円近くの支払いを回避することができるので、独立したてで少しでも資金を多く確保したい場合に有効です。

事業が軌道に乗ってきた段階で免除期間分の年金を支払うことも可能なので、経済状況に応じて活用できる制度になっています。

2年経過後も所得が伸び悩んでいる場合には、同じく免除申請を行うことができるので、状況によっては国民年金の支払額を低く抑えられる場合もあります。

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国民健康保険の前納・延納による控除額調整

国民健康保険についても、社会保険料控除の対象となり、支払額の全額を所得から差し引くことができ、課税される所得額を下げることが可能です。

社会保険料控除の対象となるのは、1月~12月までの1年間に支払った厚生年金や国民健康保険料等の金額なので、可能な範囲で前納したり、支払時期を遅らせたりすることで控除額を調整することができます。

前納の場合は国民健康保険への切り替え後に送付されてくる払い込み用紙を利用すればOKです。

いずれ12月の段階で翌年分は2~3か月後にいずれ支払うことになるので、退職直後の課税所得と来年の収入見込みを踏まえてより課税所得の大きくなる年に支払いをすればOKです。

自身の場合は退職した給与所得がある年に、翌年分の可能な範囲まで支払う方がお得でした。

同様にその年の所得が国民保険による控除を除いて0円以下となる場合は、支払いを年明けに回すことで開業した翌年以降の節税に利用できる場合があります。

いくら税金の調整とはいえ滞納するとその分延滞税がかかる場合があるので、せいぜい11月末納付分を来年に回すくらいが限度のように思います。

納付期間の後半に引っ越しした場合、一時的に所得が0扱いでの国民健康保険の納付書が届く場合があります。

自身は後日届いた本来の納付額の通知を無視して、知らずに安いほうで納付してしまったため、年明けに本来の高い納付額との差額を納付する羽目になりました。こういった形で期限内に納付したつもりでも、後で追納するようなケースもゼロではありません。

節税上は逆となる場合が都合がよかったのですが、独立当初は知識がなく、税金(保険料)を多く納める結果になりました。

簡単にシミュレーションするため、退職年の課税所得を200万円、翌年の課税所得を0円、左記の課税所得に含まれない年度をまたいで支払いの調整可能な国民健康保険の金額を20万円として計算します。

支払い時期 退職年課税所得 翌年の国民健康保険
退職年(前納) 180万円 前納の方が安い
翌々年の保険額は同じ
翌年(延納) 200万円

退職年に保険料を前納した場合、通常であれば翌年の課税所得は国民健康保険の支払額が少なくなる分高くなりますが、開業直後で経営が軌道に乗っていなかったり、開業費などで経費計上の結果ほとんど所得がない状況であれば、前納した方が支払う税金、保険料ともども安くなるケースが存在します。

節税のメリットがあるかどうかは収入によるので、状況に応じて前納するかどうかの判断ができると、年間で数万円~という単位で節税につながる場合があります。

まとめ

脱サラして個人事業主になった場合、課税所得の低減(調整)策や国民年金の特例免除制度等を活用することにより、翌年以降に支払う税金や社会保険の金額を低減させることが可能です。

収入があればそれに越したことはないですが、独立直後で苦しい時期や、利益が多く出た場合の知識を身に着けておけば、税金・社会保険料への支払いを、経費や必要となる備品等の支出に回すことができます。

他にも、生命保険控除・雑損控除をはじめとした各種控除や、寄付金控除(ふるさと納税)もサラリーマン時代同様に利用できるので、今回は紹介していない制度も合わせて活用するとさらなる節税につながります。

知識のないまま会社員をやめて独立すると、払わなくて済む税金・保険料まで支払うことになるので、独立を考えている方、すでに独立をした方は早めに知識を身に着けてしまいましょう。