働き方改革の影響もあって副業に取り組む方も増えてきていますが、中には将来的な起業を考えている方も少なくないでしょう。
特にここ数年はインターネットやwebサービス、SNSのおかげもあり、1人から自宅兼オフィスでも自分のビジネスを始めやすくなっている印象があります。
起業を考えている方も相対的に増えてきている状況の中、起業塾・起業セミナー・起業コンサルといった宣伝が目に付くようになってきましたが、運営者が逮捕されたことが全国ニュースになったり、悪質なセミナーが開催されているといった悪い面も取り上げられるようになってきています。
個人事業・事業所得から見る起業の目的
起業の目的は様々で、新たなサービスを提供して社会貢献することを目的としている場合もあれば、会社・個人事業経営者という社会的地位を得ることを目的としたもの、とにかくお金を稼ぎたいものまで起業する人によって考え方が異なります。
また優先順位はどうであれ、最終的に事業を通して収入を得ることが目的の1つとなっています。
会社組織であれば理念をもって営利活動を行っていることは明確ですが、個人で副業で行っている段階では収入があまりない場合があること、また立場的にも事業からの収入がなくても生計が立つために、営利活動を行っていることが希薄になっている方が少なからず存在するのではないかと思います。(自身も独立を考えた初期のころは収入にならなくてもきっかけをつかめればOKくらいの感覚でスタートしていました。)
税金上の事業所得の「事業」は元々、営利性のある業務を自己の計算とリスクを背負って反復・継続して行うことが求められているので、いくら起業塾・起業セミナーに参加したり、起業コンサル受けたところで収入を得るために活動する主体は、起業セミナー等に参加する側であることに変わりありません。
つまり、すでに明確な目標、事業内容をもって起業する場合には、起業セミナーを受けたところで無意味になってしまことも。ただし、起業する業務に関する知識の不足を補う場合や、税理士をはじめとした税金関係のセミナー、商工会議所の融資関連や創業関連のセミナーなどは役立つ場合も多いので、参加してみても良いと思っています。
自身は、開業にあたって知識の不足を補うため、近くの税理士さんに相談に乗ってもらったことがありましたが、いわゆる起業セミナーに参加したこともなければ、参加したいと思ったこともありません。
個人事業における事業所得に関しては以下の記事で紹介しています。
起業セミナー参加者は起業できない人?
起業セミナーに参加している以上、少なくとも起業したい、してみたいと考えている方がセミナーに参加しているはずです。
一方で、実際に起業する人は、どの分野でどんな仕事をするか起業セミナーに通わずとも準備を進め、起業セミナー等に顔を出さないまま勝手に起業していることがほとんどのように思います。
実際に、自身の周りではスキルを学びにセミナーに参加することは耳にしますが、起業セミナーに積極的に通ったおかげで起業したという話はあまり聞きません。
世の中的にも、起業セミナーの積極的・頻繁な参加が起業につながっていないケースの方が多いのではないでしょうか。
元々ある事業を継承する場合や、親族の遺産を引き継いで不動産業を行うなどでない限り、起業の準備期間に時間を割いた方が効果的な時間の使い方のように思います。
起業仲間を作りたいのであれば、セミナーに参加する意味はあるかもしれませんが、起業のためのセミナーという本来の参加目的が起業仲間づくりへと置き換わってしまっています。
結局、起業のアイデアがまとまらず、起業セミナーに参加して起業に対する知識を得ることが目的になってしまっている場合もあるようですが、こうなると起業しないまま時間だけが経過していってしまいます。
中には数回の講座やコンサルで数十万円の費用を支払う場合があるようですが、事業を始める前の段階で資金と時間を消費してしまっているので、起業に使える資金・時間が少ない不利な状態からのスタートになってしまいます。
数十万の資金と時間があれば、集客用にブログを作ったり、事業に必要なものを購入したり、必要な資格を取得することも場合によっては可能なので、特に起業前の段階で高額なセミナーに資金を投入するのは控えたいところです。
いずれにせよ、何となく起業したいと考えていても、起業しない方がセミナーに参加しているイメージがあります。(起業した場合、セミナーに参加するよりも、自分のビジネスに時間を費やして経験を積む方がよほど為になるため、こういったセミナーに参加するケースはまれです)
主催者の目的:セミナーの売り上げ目当ての場合も
セミナーを開催している以上、会場を借りる費用や告知、人件費などの費用が発生する場合がほとんどです。参加者が参加費を払うものもあれば、無料で参加できるものまで様々です。
当然、主催者側は何らかの目的があって開催しているので、主催者の立場別に開催の目的を見ていきます。
主催者が国や県、市町村などの公共団体
公共団体といっても様々ですが、良く見かけるのが市町村や都道府県単位のもので、地域活性化などといったキーワードが含まれていることも多くあります。
公共団体が主催のセミナー目的は雇用の創出、税収・消費の増加、空き家の有効活用(解消)など、産業的、社会的な課題からくるものが多く、最終的に起業してもらうことで間接的にでもこれらの課題の解決に寄与してもらうというものです。
商工会議所
自身も政府・地方自治体関連の組織だと思っていましたが、認可法人として半民半官という立場の存在です。
商工会議所は、セミナーやパソコン教室などを開催して収入を得たり、会員からの会費収入を得ているのでお金儲けに見える面もあるかもしれませんが、営利を目的としたものではなく、経済や地域の発展のために活動を行っている団体です。
公共的な側面が強く、非営利性の組織のため、先に述べた通り公共団体と同じような目的を有している場合が多いです。
士業、銀行等サービスを契約してもらう立場
税理士や銀行がセミナーを開催する場合、立場がはっきりしている分イメージが付きやすいと思います。目的は主催者自身が提供しているサービスを契約(購入)してもらうことにあります。
税理士であれば、事業に関連する記帳の指導や顧問契約など、銀行であれば事業資金を借りてもらって手数料収入を得ることにあります。
少し論点がずれるかもしれませんが、コンビニなどのフランチャイズのセミナーもこの分類にあたると考えられます。
もちろんこれらのセミナーは、きちんとしたサービスを提供できることを前提にセミナーを開催しているので、セミナー内容は提供するサービスに偏る場合も考えられますが、十分に質を伴ったものになっていると思われます。
セミナー内容が曖昧、参加してもらうことが目的の立場
一番参加してはいけないのが、セミナー内容があいまいで、セミナー主催者がセミナー業で儲けることを目的としたセミナーです。
起業支援と言いながら、何を支援するのか具体的に明言していない主催者が開催する場合や、セミナー業以外の仕事をしていないのに起業家セミナーの主催者になっている場合には注意が必要です。
このような場合、内容が薄いなど実力が伴っていなかったり、起業したいという気持ちにさせる・気持ちを高めるということに焦点が当てられています。
中には洗脳やそれに近い話術を駆使するものも存在するようです。
先に紹介した主催者のセミナーを受けても起業できないかたは多いと思いますが、起業というキーワードに集まったお客からお金を得ることが主目的であるセミナーに参加していると、さらに起業への道は遠のいてしまいます。
逆にいうと、相手の立場が分かれば参加すべきセミナーかどうかが判断しやすくなるので、「起業」という言葉に惑わされずに、セミナーの主催者側の開催目的を踏まえたうえで参加を判断してください。
起業の主体は起業者自身
いくら良い起業セミナーであっても、セミナーが参加者が起業できるかは参加者自身によるものが大きいと思っています。
同じセミナーに参加していても、起業できるまでのスピードも人それぞれで、半年、1年単位で差がつくことも珍しくないでしょう。
起業できる・できないの差を言葉に表すのは難しいですが、差の大部分は「人に頼って・教えてもらって起業しようとするか(受け身か)」、あるいは「自分自身の力で・自ら積極的に起業しようとするか(自発的か)」という所にあるように思う。
すでに構想の初期段階までできていて、こういったセミナーに参加して構想を具現化するのであればセミナーも大いに役に立つ場合がありますが、起業してみたいの段階でセミナーをはしごしていても一向に前進は無いように思います。
今ではネットビジネスを中心に、ほとんど費用が掛からずに開始できるものもありますが、大半の場合において起業することは費用も時間もかけて行うことなるので、自らの力で積極的に起業の準備を行う姿勢がない安易な考えのままであれば、起業の検討を取りやめ、他のことにお金・時間を費やして有意義な時間を過ごす方が賢明である。