「電通」の女子社員の過労自殺が報道されて以降、長時間労働および労働時間抑制対策に対する注目が高まっています。
電通以外にもニュースに取り上げられる企業はあるが、あくまで悪質な事例や過労自殺等で表面化した氷山の一角で、報道の対象となってない多くの企業・職場でも違法性のある「長時間労働」が行われているという認識が一般的ではないでしょうか。
単に社内・当事者だけが原因とは限らないが、長時間労働をさせる立場の上司・経営者側を注目する対象としたい。
管理人のこれまでの職歴と会社員時代の体験談
管理人自身は、理系大学・大学院(修士)と進学し、大手企業で会社員(技術職)として3年半働いた後、個人事業主として独立している。
大まかな数字ではあるが、忙しい期間は以下とおり、長時間の研究・労働をした経験がある。
<長時間研究・労働(残業時間)の実績>
大学院時代の「研究」:月220~240時間(会社員時代の残業時間へ換算)
会社員時代の「労働」:月120~150時間(実際に残業時間)
ここでの「研究」と「労働」は全くの別物であるが、「研究」として表記している時間は物理的に仕事として活動できるキャパシティとして考えて欲しい。
会社員時代に100時間越えで働いてた時で一番忙しかったときは以下のような感じであった。
・月~木:8時台~24時頃(早帰り時は自宅で資料作成)
・金:8時台~最長27、28時頃
・土:夕方くらいまで寝る⇒退職後のための情報収集
・日:退職後のための情報収集/会社関連の資料作成(2~3時間前後)
月によって労働時間の増減はあるが、このような状態が1年程続いた後、調子を崩したことをきっかけに3年半で会社を退職することになりました。
過労死されている方の労働時間と比較すると短いほうかもしれないが、過労死の基準となる時間(残業80時間/月)を超えて残業し、調子を崩して会社を辞めた立場からの考え・主張として捉えていただきたい。
モチベーションの下がる労働環境
入社した会社で所属した部署は、同じスペースに良いチーム・悪いチームが共存していました。
良いチームは、リーダーの社員を中心に統率が取れており、仕事内容の関係もあってか残業が少なく、また残業ととなってもリーダーがうまく作業を割り振り仕事を捌いていました。
一方でかつて所属した悪いチームでは、正反対の扱いのオンパレード。
・雑用は時間がかかっても下っ端任せ
(かつサポートを依頼できる人がいない・・・)
・定時過ぎで帰る社員、残業する社員の労働時間差が大きい
・チーム内の残業の少ない社員が仕事の進捗に文句を言ってくる
・無駄な会議への反強制参加(参加しないと仕事を妨害される)
・仕事が制限されている社員のモンスター化
などなど。チーム内でも常時定時付近に帰宅する社員、遅くまで残業する社員に2分割されていました。
自身は諸事情により途中から雑用を一手に引き受ける立場になったため、長時間の残業が常態化することになりました。
また定時過ぎで帰る社員ほど生産性が悪かったり、理不尽な要求をしてきたので、仕事へのモチベーションは徐々に失われていきました。
労働時間の修正・過少申告は当たり前!?
先に述べた通り月に120時間程度は残業を行っていたが、実際に残業時間として申請でき、手当が支払われたのは20~30時間台。
予算の関係で残業したと申請できる時間が実質的に制限されていたような状態で、長時間労働させつつも予算内ということ(人件費の削減)が優先されているように感じました。
実際に労働時間を過少申告したり、残業中働いていないことにしていたりでしたが、それが暗黙の了解(かつ無言の圧力がかかっている)になっていて、上司もあまりそのこと分かっていながらスルーしている状況でした。
労働時間が長くなることを抑制・対策するよりも、サービス残業させてでも予算を達成することで成果にしたいと考えている管理職は多いのではないでしょうか。
実際は違法に労働時間が短く修正されていたり、早めにタイムカードを切ることを強要する場合もあるので、数字以上に悪質なケースは多いのではないでしょうか。
上司が残業前提で仕事を割り振る・部下の労働時間を把握しない
このケースも多いと思いますが、残業前提の業務を平気で割り振っているケースは多いのではないでしょうか?
自身の場合、10~12時間ほぼ休憩なしで立ち作業でを行う日も多く、下手をすると朝から開始して夜の8時、9時までほとんど休憩なしという日もありました。
この仕事だけでも毎日残業が確定しているのですが、加えて雑用から何から押し付けられ、夜の10時を回っても1人帰れないことも良くありました。(一方で残業無しで帰る社員もいる・・・)
当然、他の仕事の進捗は遅れるので相談に行くと、「なぜ期限に間に合わない?」「相談に利用できる仕事のスケジュール・資料を(時間をかけて)作成して出直してこい!」と返答を受ける状況でした。
上司のマネジメント不足に加え、残業となった原因の矛先が社員自体に向いてしまうことが問題である場合もあります。
仕事への責任感による半強制な長時間労働
自身の所属した部署では、仕事の量、負荷に関係なく振られた仕事はほとんどが担当者の責任でした。
そして物理的に通常の労働時間で処理が困難な内容でも、期限内に仕事が終わらないのは100%個々人の仕事の進め方が悪いという扱いでした。
当然仕事を抱えている側は期限に間に合わなかった仕事を半強制的に長時間労働で処理することになるのですが、元々誰かの処理しない、処理しようとしない仕事を担当しているために起こったことなのに、「責任感がない」という指導をいただくことに。
仕事の期限に間に合わない本当の原因は?と聞かれたら、自身は以下のように切り返す。
・仕事をしない社員の分の余計な仕事をこなしている
・残業前提の業務が組まれているので、上司の仕事の振り方が間違っている
・仕事をしない社員・モンスター社員の行動によるモチベーションの低下
自身は仕事の進め方が悪いかのような発言をさんざんされることになるが、元をただせば長時間残業している側よりも、指示している上司側や仕事をしない(作業効率の悪い)社員にこそ問題があるように感じることが多かった。
その話をしたところでまともに聞き入れるようなメンバーではなかったので、環境を変えるという意味で退職を選んだことは正解だと思っています。
安全活動が不安全な作業・行動につながる矛盾
労働安全衛生法により管理・監督する立場の上司には安全や健康に配慮する義務が生じている。
そのため「安全活動」自体は企業活動において欠かせないものであるが、自身の場合「安全活動」も含めた長時間労働が逆に睡眠不足という不安全・不健康な状態を生み出していました。
仕事をするうえで、何よりも「仕事をする人自身の健康状態」が優先されるべきだと思うのですが、管理者がきちんと指導を果たしていることを示す資料、すなはち「安全指導を徹底している証拠を作ること」が実質的に優先されている状態となっていました。
自身の場合、いくら作業する技術を大学・大学院時代に磨いてきたとはいえ、モチベーションが奪われ、精神的に疲弊している中で深夜までの作業を行う日も多くありました。
いくら長時間労働といっても、実際に安全や健康を奪うものとなってしまっては問題なのですが、こういった活用をされている従業員の方は多いのではないでしょうか。
モチベーションがあって働き甲斐がある場合の長時間労働は推奨されても良いのかもしれませんが、結果として人を使いつぶすことにもなり得る働かせ方をしているのは、使用者側の責任問題ではないでしょうか。
まとめ
違法な長時間労働について、自身の体験をもとにまとめてみました。
実態は表面化してないことが多いものの、問題のある上司や経営者の都合に振り回されているのが現状なのではないでしょうか。
過労死や精神障害は「長時間労働+パワハラ・ストレス等」で起こっているように感じるので、長時間労働が続いてしまっている方は、単に自分自身の仕事の進め方が悪い・しょうがないという考え方ではなく、指示する上司や経営者にも問題があると考えてみてはいかがでしょうか。
会社に定着しているのは、会社にとって都合の良い人材だったりするので、不当な扱いを受けても委縮せずに意見の主張・交渉をすると良いでしょう。
聞き入れない、配慮ができない上司や経営者は問題(場合によっては違法)なので、配置転換を申し出たり、転職するといった対応で、心身ともに疲弊する・自殺するのは避けたいところです。