手持ちの不用品を撮影するだけで、一瞬でキャッシュ(現金)を受け取ることが可能なアプリである「CASH」というサービスが色々と話題になっています。
サービスとしてユーザーの利便性を追求し、ユーザー目線からは利用者の資金需要&中古品買取ニーズをより簡単に満たせるサービスのように思いますが、法律的には色々と問題があるように感じます。
サービス開始から16時間で3.6億円、7万回を超えるキャッシュ化が行われたものの、運営体制が整ってないとの理由でサービスが一時休止となりましたが、この「CASH」に関する問題点を紹介していきます。
「CASH」は実質の質屋&買取サービスアプリ
「CASH」は自体は、運営するサービスの機能から、質屋&買取サービスのハイブリッド型のサービスを提供しているように受け取ることが可能です。
はじめに「CASH」の提供しているサービスから解説していきます。
サービスはキャッシュを返すかアイテムを送ることで完結
「CASH」では以下のような流れでサービスを提供しています。
1.アイテム・状態などを選択し、スマホで写真を撮影することで査定完了
実際は品物をチェックしていない
2.アプリ上からキャッシュ化⇒銀行振り込みまたはコンビニ受け取り
※コンビニ受け取りは1万円未満の場合のみ利用可能
1万円以上の取引の場合は身分証の画像提出が必要
ユーザーの住所、氏名を画像以外で確認しないまま代金を先払い(非対面取引における確認が不十分な可能性あり)
⇒不正利用される恐れもある
3.キャッシュ化後2か月間はアイテムを手元に置いたままでOK
質屋営業に該当することを回避したり、質蔵を不要とするため?
4.2か月以内にキャッシュを返すかアイテムを送付
※キャッシュを返す場合は返金手数料として15%上乗せで返金
アイテムを送る場合、この時点で古物営業法での本人確認・物品の引き渡しが完了する。
キャッシュを返却する場合、貸付としてみなされ、出資法、貸金業法に違反する恐れがある。
(現状、最低でも年利90%となり、法定利息の上限である20%や、質屋営業の上限となる109.5%超える場合があり、違法となる可能性がある
赤字に部分が管理人自身が問題だと感じる部分です。
なお、運営しているBANK社は古物商許可は取得していると表記があるものの、質屋営業許可や貸金業登録の表記はありませんでした。
利用者は踏倒しや粗悪品の売り付けができる?
法的には問題はあってもユーザーにはメリットがあるため、利用者は短期間の間に殺到していたようです。
運営体制の不備から、16時間ほどで査定制度を一時中止するに至っています。
キャッシュのサービス内容を見る限り、先に代金を支払ったり、実物で査定しないことで、トラブルが発生すること十分に想定可能です。
仮にサービスが法律的に問題ないとして、2か月以内にキャッシュを返すことを前提に利用する方は、相当金融リテラシーに欠如しているか、やむを得ずサービスを利用してでもお金を得たいと考えている方のいずれかでしょう。
2か月以内で15%の手数料を支払うくらいであれば、消費者金融やカードローンで借入した方が圧倒的に支払利息は安くなります。(手数料:1年間で最大20%)
特に後者の方々の場合には、踏み倒すことを前提にお金を借りる可能性がありますが、トラブルになった場合でも基本的には民事訴訟になるため、回収コストがキャッシュとして支払った金額に見合わない可能性が高い。
また買取にしても、利用者が正しく状態を申告するかは信頼してはいけない部分であると思います。
個人間取引ではただでさえ、説明不足・認識の相違によってトラブルが多発しているのに、そういったレベルの利用者が「CASH」を利用すれば、おのずと良い状態と偽ったり、内容を誤魔化して売りつけてくる可能性がゼロではないことは容易に想定できるはず。
ということで、個人的には不正利用がしやすいから人気となった側面が強いように感じています。
中古品買取アプリとしても中途半端
CASHを利用してまず問題となるのが、商品を確認していないことによる状態に関する相違です。
査定する場合、その商品の状態まで加味して金額が算出されることが一般的です。
CASHでは写真撮影までで買取価格を決めて先払いしていることから、商品到着時に申請している状態と買い取る側の認識が異なることは十分に考えられます。
また、真贋の判断も写真だけでは困難な可能性があるため、買取としてのサービスは機能しているかというと怪しい部分があります。
仮に買取が正常に行えたとして、2か月間運営側にアイテムが送付されない可能性があるため、その間に商品の価格が下落することも考えなければいけません。
となると、買取価格ははじめから低めに算出する必要があり、同業他社と比較して不利な条件での買取サービスとなってしまいます。
また非対面取引での即日換金は、他社を一歩出し抜く状態になりますが、本人確認が完了していない状態で代金を支払うことは古物営業法として規定されていないので、罰則対象となる可能性があります。
サービスとしてはユーザーにメリットがある面もありますが、中古品買取に必要な古物営業法から考えても法律面からは逸脱している恐れがあります。
メルカリ等の匿名発送も違法転売を助長
同じく中古品取引で問題行為にも利用される恐れが高いのが、匿名発送サービスです。
元々は個人情報を公開せずに気軽に取引したい利用者向けのサービスと思われますが、悪く利用すれば悪徳業者のように住所等の情報を開示せずに販売したり、盗品の売りさばきにも利用しやすくなってしまいます。(元々出品者の住所は購入者に開示されないため、住所等の偽装は容易)
また、匿名発送で送った商品に問題があっても、匿名取引のため返品先を公開したくないというトンデモ出品者がいたり、住所が開示されていないため後々問題があった場合でも対応を要求することすら困難になってしまいます。
これまでも楽天オークションでは匿名取引が行われていましたが、より簡単に出品・販売できるフリマアプリへと匿名取引の場が移ったことにより、より気兼ねなく盗品や偽物・違法な物の販売がしやすくなりました。
加えて、nintendo switchに代表される古物商許可のない転売や、口座への出金を行わないために転売利益に対する税金の脱税(+生活保護の維持のための闇口座)にも利用される事例もあるようです。
こういった行為は、これまでオークションサービスに出品するのが面倒であったのを、アプリの登場でより簡便に行えることになったことや売上金を出金せずに次の支払いに利用できるシステムにより、様々なユーザーを取り込んで成長していたっためだと思われます。
今回の「CASH」もユーザーの利便性を追求した結果、人気になった面があるように思いますが、その結果違法性のある取引・行為を収益対象としている点は問題があるように感じます。
「CASH」や「メルカリ」にはWelqやMERYなどのDeNAのキュレーションメディアと同じく収益が上がれば良しとしている部分があるように感じられ、ユーザーのメリットを優先した結果、他の事業者の不利益にもつながっているので、特に法律上問題のある(行為に利用されうる)サービスについては、規制・淘汰されていくべきでしょう。
まとめ
「CASH」は手っ取り早く換金できるアプリとして人気が出たように思いますが、法律上問題があるような方法を駆使してまで収益を上げようとしてしまった点には大きな問題があるように感じます。
同じくメルカリなどの匿名発送も、利用者へのメリットを謳いながら、実際には都合よく品物を売りさばくための制度・違法行為にも利用しやすい制度にもなってしまっています。
トラブル防止や公正な競争のためにも法律が定まっているので、法律の抜け穴をつくようなサービスではなく、法律に準じたサービスで中古品取引や貸金・質屋営業の場が提供されることに期待したい。