近年お得・豪華な返礼品で人気・話題になっているのが「ふるさと納税」で、全国での納税額の合計は2015年で約1650億円、2016年全体では3500億円に達しようとする勢いです。

一方で、全国の納税行為全体を見た場合、「ふるさと納税」を行うことによって税金の流出(タイトル上の奪税:個人的な視点では節税)が起こり、深刻な問題となっている市区町村もあるようです。

今回は納税と言いながら、税金の流出が問題となる「ふるさと納税」について取り上げます。

そもそも「ふるさと納税」って何?

納税という単語が入っているため、納税の1つの形と考えている方も多いのではないでしょうか?

制度が広く認知され、一般的になってきた現在では2つの意味があるように思う。

元々の趣旨:ふるさとへの寄附金による税金控除

「ふるさと納税」の制度は元々、地方で生まれ育った人が大人になると都会へ出て行ってしまい、都会に集まる税金の一部を地方に還元するために「寄附金」という形で作られた制度です。

本来は住んでいる(住民票のある)自治体に納めるのが住民税ですが、2000円の自己負担をすることで、実質的に所得に応じた税金の一部を好きな自治体に納められるシステムになっています。(正確には寄附金に対する控除という形で所得税の還付・住民税の減税を受けられます)

都会へ出た方が生まれ育った実家のある地域へ、ほとんど負担なく税金を納めることができるほか、災害時にも「ふるさと納税」システムを介して寄附が集まるというメリットもあります。

返礼品・節税目的のお得なふるさと納税

近年では多くの方が、自己負担2000円のみでお米やお肉、家電製品などがもらえるお得なシステム・節税制度として認識しているものと思われます。

個人的な視点だけを見れば、この認識も間違いではなくわずか2000円、場合によってはカード払いなどの特典で2000円以上に還元があり、「ふるさと納税」を行うことで何一つ持ち出しする費用がない方までいるのではないでしょうか?

実質的には節税になる合法的な制度ですが、返礼品を受け取る場合は「ふるさと納税」そのものの趣旨を考えると「見返りを求める寄附」と捉えることもできます。(返礼品の受け取りは選択制で拒否することも可能なため)

ここ近年豪華な返礼品を設定する自治体が増えてきたことによって、通販のような形で宣伝が行われたりと返礼品合戦となり、政府(総務省)が自粛要請を出す例も存在しています。

「ふるさと納税」に対しては様々な意見あると思うが、テレビ出演する著書を持つ専門家を中心に、お金の亡者という印象を抱く方も少なくないのではないでしょうか。

「ふるさと納税」による奪税と問題点

特にここ最近は、ふるさとへの寄附ではなく、見返り・返礼品目当ての「ふるさと納税」が増えたような印象があります。

お得な制度の裏側となる「奪税・歪み」の部分について考えてみたいと思います。

ふるさと納税の経費率は4~5割

当然、普段の納税に+αで別の自治体へ支払う行為を行っているため、またさらに返礼品を受け取ることによって、「ふるさとへ税金を移す行為を行うため」に余計な経費が掛かってきます。

総務省が公表した「ふるさと納税に関する現況調査結果」によると、2015年のふるさと納税額1653億円のうち、かかった経費は約半分の793億円、比率にして48%にも達します。

平均値のため各自治体によって差はあると思いますが、税金を移す行為のためにこれだけのロスが発生しています。税金を移す行為がなければ発生しない費用のため、非効率な納税方法として認識しても問題ないと思われます。

かかった経費の内訳は以下のとおり。(ふるさと納税に関する現況調査結果より)

項目 金額
返礼品の調達費用 633億円
返礼品の送付費用 43億円
納税募集の広報費用 14億円
決済手数料等 18億円
事務費用等 85億円

※金額は四捨五入した数値

かかった費用のうち、圧倒的なのは返礼品および返礼品送料で、寄付額の4割相当が平均的な返礼品の調達にかかる費用相場のようです。

納税する側としては、1万円分のふるさと納税を行うと、送料込み4000円相当の商品がもらえてお得という印象になるのではないでしょうか。

ここまで高い経費率をかけていれば、お得で返礼品目当てに納税する人が増えるのも納得できますね。

ふるさと納税で得する人・事業者

ふるさと納税による利益を受ける側を個人・事業者単位でまとめてみます。

消費者視点:返礼品で得する

多くの方が最終的には寄附金以上の返礼を受け取っているものと思われます。そのため、ふるさと納税してほとんどタダで商品がもらえるお得な制度を利用しないと損といった印象があるのではないでしょうか。

原資以上の返礼品がリスクなく得られることも人気の要因ではないかと思われます。

ただし、個人的な視点で考えた場合に限られることには注意が必要です。

どちらかというと本来納める税金を個人の懐へ入れるといった方が、個人的な視点を正確に表している気もします。

返礼品提供業者:返礼品の売り上げ増で得

多くの場合、ほかの消費に代わってふるさと納税の返礼品を活用することになり、自治体によりある程度まとまった数の返礼品需要が生まれるため、結果として収入が増えて得をすることになります。

結果として返礼品提供業者による消費税や法人・事業税をはじめとした各種税金の増加につながれば、自治体としてもさらにお得になります。

一方で、売上を自治体に依存することによる問題点や、小売業者間での歪みを生み出すことにもつながります。

付随サービス提供業者:おいしく儲ける場合も

返礼品を発送する運送業者や、決済関連のサービスを提供する業者、集客を代行する業者・アフィリエイター・サイト運営者といった面々もふるさと納税の恩恵を大いに受けるのではないでしょうか。

この中、運送業者や決済関連のサービスを提供する業者は、従来の消費が減る部分があるため大きなご利益があるわけではなく、サービスの提供範囲がふるさと納税に置き換わっている面が大きいように思われます。

それに対し、ふるさと納税を宣伝して稼ぐポータルサイトや個人サイト運営者は、原資がほぼかからない税金によっておいしく利益を得ているものと思われます。

(「おいしく」といってしまうと、苦労してサイトを作成している立場の方にとっては失礼になってしまうようにも思えますが、元手が本来納めている税金の範囲内であるためこのような表現を使用しています。)

お得な面をまるでネットショップのようにPRして、支払額の一部や、サイト上に設置した広告により、実質的には税金の一部を奪うような形で報酬を得ていることになります。

有料のクリック課金広告やバナー広告を見かけたときは、ビジネスのネタにしかなっていないと感じてしまいました。

通常の商品を紹介するのに比べれば消費行動につながりやすいため、現在ではポータルサイトやお得さの面をPRする個人ブログ・サイトが乱立してきているように思います。

下手をすると、記事ネタのための「ふるさと納税」になってしまっているような面があるように思います。

全体的に見たふるさと納税による歪み

ここ最近ニュースでもふるさと納税の返礼品に対する批判が高まってきていることが相次いで報道されています。

5割ほどの経費をかけても収入が超過する自治体も多くあるようですが、一方で都市部を中心に、場合によっては恩恵を受けるはずの地方でも税金の流出につながっているところも出てきています。

ただでさえ税金不足と言われている中で、無駄の多い税金移動で個人の懐を肥やすバラマキを行う意味があるのかどうかは疑問に思います。また、5割も目減りする納税を「お得」と考えること自体が色々と問題があるように思えてきます。

ここ最近話題になっている事例を紹介します。

自治体のサービス低下

「ふるさと納税」を制度的にいえば、納税者のためのサービスというより、納税先を選択するだけの余裕がある方向けの制度になってしまっています。

どちらかというと、今後納税者となる立場の方や、子育て支援に費用を使うことの方が今後の納税額の増加が期待でき、メリットがあるように思います。

税収が減り、業務による負担が増えることによって、これまでの自治体のサービス自体に影響が出てもおかしくないでしょう。

流出が多い東京都の場合、個人の懐へばら撒く場合より、保育園の待機児童の解消などに使った方がよっぽど有効な利用先と思います。

目先のお得さを優先する方が多いことも歪みを拡大させている原因ではないでしょうか。

リスクの伴わないばら撒きに近い制度

単に税金を払いたくないのであれば、開業する、副業することで様々な節税が可能になる場合があります。(サラリーマンでも生命保険や確定拠出年金、高額医療費、住宅ローンによる減税措置は存在します。)

事業でお金を得るために必要になった支出は、経費として利益と相殺して節税をすることが可能で、消費行動を伴うことで節税を行うことが可能です。

こういった使い方であれば、税金が減ってもその分の消費があり、お金が循環するため社会的意義がある節税と言えますが、リスクのないふるさと納税であればお金は循環しても全体的な消費が増えるわけではないので、社会的意義のない節税策といえます。

政府も雇用を生み出すために様々な助成制度を設けていますが、税金が目減り・消費が落ち込む行為に対して優遇をしているという、結果としてあまり意味のないお金の使い方を設定していることになっています。

例えば20㎏のお米でも、5000円で販売している小売店と、ふるさと納税で実質の負担がなく0円でもらえる自治体であれば、ふるさと納税でもらう消費者が多いのではないでしょうか。

その後、ふるさと納税でもらえるからと、5000円で販売している小売店から買うのがばかばかしくなる場合も大いに考えられます。

本来であれば5000円分の消費をするために5000円分の収入を得るべきところ、その5000円分の財源を本来払うべき税金からねん出しているところに大きなゆがみがあり問題となっています。

小売りの低迷と競争阻害

先ほども述べましたが、実質ただに近くて手に入るものをわざわざお金を払って買うという方は少ないのではないでしょうか。

この結果、努力して販売量を増やそうとしている小売店の客がふるさと納税を行った自治体へ流れてしまうことになり、返礼品の分に相当する量の消費が減ることにつながります。

当然、企業努力で販売量を増やそうとしている場合には、売り上げをばら撒きの財源に奪われることになるので、ただ単に市場の公正な競争を阻害するだけの存在になってもおかしくはないでしょう。

どうせばら撒くのであれば、最終的に懐に入らず消費が増える方向に向かう制度にしなければ、税金を優遇する意味に乏しいのではないでしょうか。

歪みなく「ふるさとに納税する」方法

各納税者の限度額を超えたり、返礼品を不要で申し込みをすれば、「ふるさと納税」の効率の悪さを解消できる場合がありますが、それ以外にできるふるさとへの納税方法を考えてみました。

地元の企業に就職・住民票を地元にする

一番簡単な方法ですが、メインの納税地を「ふるさと」にすることで、一番多くの納税をすることが可能です。

仕事の都合もあり困難な場合も多いと思いますが、ふるさとに居住・活動拠点とすることで、文字通り「ふるさとに納税する」ことにつながります。

こちらが本来のふるさと納税だと思うので、それと比較して現在の「返礼品目当てのふるさと納税」がいかに納税になっていないか理解しやすいのではないでしょうか。

地元の企業のサービス利用・商品購入

遠隔地にいて貢献しやすいのが、地元のサービスや商品を購入することです。

法人税・消費税・事業税に加え、従業員の給料に対しての税金が最終的にふるさとへ納められることになるので、ある意味わかりやすい選択だと思います。

ネットショッピングでもamazonなど海外のサービスでは利益が海外に流れてしまうので、貢献したい地元の企業を利用するというのもある意味で納税先を選んでいることになります。

スーパーでも地元の企業が作っている製品、おみやげを買ったりすることも間接的にではありますが、納税につながる行為となります。

他にも、事業を起こしたり、不動産・土地を持つといった方法でもふるさとへ貢献することが可能です。

心からふるさとへ納税する気持ちがあれば、目減りする税金移動を利用するのではなく、まずは簡単にできる地元のサービス利用・商品購入といったところから貢献してみてはいかがでしょうか。

まとめ

最近話題のふるさと納税の問題点についてまとめてみました。

消費低迷の中、目先の利益を追い求める方向けのためのふるさと納税になってしまっているように思いますが、消費が増え納税者を育て支援するほうに税金が使われてほしいと感じています。

ネットの情報やメディアでも集客のネタとしてふるさと納税が利用されている面がほとんどですが、ふるさと納税のゆがみと問題点に気付く方が増え、制度としてもばら撒きではない有効な活用がされるように是正されていくことに期待したい。