ここ最近、ふるさと納税の人気が高まっており、2016年の納税総額は3000億円に達するともいわれています。

一方で、システム上ふるさと納税の利用者負担が必要になる、2000円以上の返礼品の送付・提供を受けているケースが多いため、ふるさと納税に関する税収は全国的に見れば低下します。

収支が返礼品効果で大きく黒字になる市町村もありますが、金額的にいえば赤字額の方が大きくなり、ふるさと納税は返礼品によって税金を奪い合う制度のようにもなっています。

ふるさと納税の経費率は40%前後、寄付者の負担はごくわずか

ふるさと納税は、ふるさと納税をする側にとって利益があるからこそ人気な面があります。

一時期は寄付額の5割を超えるような返礼品もあるなど、2015年の実績では納税額1653億円に対して793億円が経費となっています。

かかった経費の内訳は以下のとおり。(ふるさと納税に関する現況調査結果より)

項目 金額
返礼品の調達費用 633億円
返礼品の送付費用 43億円
納税募集の広報費用 14億円
決済手数料等 18億円
事務費用等 85億円

※金額は四捨五入した数値

一方でふるさと納税した人数は150万人ほどなので、自己負担2000円による税収は30億円となります。

2016年の実績はもう少し控えめになることが予想されますが、おおよそ納税額の40~50%が経費として消えていきます。

2017年には規制の影響もあって上限が3割となる見通しですが、それでも1万円でも納税すれば、負担した金額以上の返礼品が期待できます。

一人あたりの平均の納税額が4万円になるので、返礼品の割合が30%で計算した場合、ふるさと納税者から見た場合、自己負担2000円で1万2000円相当の返礼品が獲得でき1万円分がお得になります。

爆発的にふるさと納税が伸びている背景には、本来であれば徴収される税金が、返礼品という形で懐に入ることで「お得・節約になる」という面が大きくなっています。

お得になる分、税金を奪っていることにもなります。いくらお得な制度であっても、自身は自営業者という立場ということもあって、ふるさと納税以外での節税の方が効果的なこともあって、現在も利用してなく、また今後も利用することもあまり考えていません。

お得さの裏側にある部分に関しては、以下の記事にて紹介しています。

近年お得・豪華な返礼品で人気・話題になっているのが「ふるさと納税」で、全国での納税額の合計は2015年で約1650億円、2016年全体では3500億円に達しようとする勢いです。

都心部を中心にふるさと納税により税金流失

「ふるさと納税」の制度は元々、地方で生まれ育った人が大人になると都会へ出て行ってしまい、都会に集まる税金の一部を地方に還元するために「寄附金」という形で作られた制度です。

そのため、元々は都心部に集まる予定の税金が地方に流れることを想定して作られた制度であるといえます。

一方で、ここ最近のふるさと納税に関しては、元々の意に反して「返礼品がもらえてお得・節約になること」「webサイト・ブログ記事作成のネタにして収益を得ること」がメインになっている面があります。

また、ふるさと納税に関係するポータルサイトでは、有料のネット広告を打って客寄せしているところもあるなど、間接的に税金を使って運営が行われている点を除けば、大手の通販サイトと同じような形式で運営されています。

返礼品として多いのが地方名産の野菜・果物・米・海産物・肉類といった食品類ですが、中には高級パソコンやiPadといった家電製品のような資産的な返礼品や、商品券といった現金と同じように使えるものまで含まれていました。(2017/5,6頃より見直しが相次いでいます)

そしてふるさと納税者へ魅力的なバラマキを行った自治体ほど、税収がアップする傾向が高いという歪んだ制度になっているのが現在のふるさと納税といっても間違いではなく、元々は支払うはずだった税金が大半であるために納税額は伸び続けています。

その結果、東京23区で129億円の税金が奪われているという報道もあるなど、本来の趣旨から逸脱した返礼目的での制度利用・返礼品合戦が行われていることに対し、総務省が2017年4月に返礼品を納税額の3割以下に抑えるように各地方自治体に対して通知を行っています。

返礼品が無い(受け取らない)納税額が増えたのであればやむ終えない部分はあるかと思いますが、返礼品合戦が行われていることで納税額が増え、本来の趣旨に反して税金が流出することになっているのは問題である。

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消費をしない人が優遇される矛盾

ふるさと納税の1番の矛盾点は、身銭を切らず、対価を払って商品を受け取らないふるさと納税者が優遇されているということです。

返礼品として地元の食品類をはじめとした商品が送られる場合も多いため、返礼品を準備する事業者や運送業者にとってはメリットがあるように思いますが、単純に考えると税収が減った分、住民サービスの低下や納められるはずであった税金による消費活動が行われなくなります。

また、ふるさと納税で商品を受け取った分、日々の食材や商品を買う量は減るので、ふるさと納税を行うこと自体が消費の減少になり得ます。

そのため、ふるさと納税をすることで、納税先の地域には局所的に貢献しているかもしれませんが、消費活動全体を見た場合にはマイナスになっているように感じます。

返礼品が消化されてふるさと納税者が得をするのはまだ良いほうで、中には返礼品をネットオークションなどで換金して懐を温めている方もいるなど、税金を消費するどころか税金で貯蓄を行っている人まで存在しているようです。

ふるさと納税に関しては、節税できるのは納税額の一部ではあるものの、リスクなく誰でも利用できます。

一般的に節税ができる場合には、事業での経費や生命保険料や住宅ローンなど、支出を伴うものが大半ですが、節税となるのは支出の一部分にとどまります。

一方で、ふるさと納税は収入に応じた限度額の範囲内であれば、自己負担金として支払う2000円以上の商品が返礼として受け取れるため、節税策・節約手段としても特殊です。

多くの方にとってのふるさと納税は、ただの単なる節税制度にしかなっていないので、返礼品を送るだけで消費に貢献していない制度となってしまっているのには疑問です。ふるさと納税での返礼ではリピートしても、通常の購入でリピートするといった話があまりないのが、返礼品目的であることを象徴しているように感じます。

ただ、最近の傾向として、地元のPRを兼ねた体験型の返礼を準備する自治体もあるなど、節税制度としての利用以外の部分での納税を促すような工夫がされていることは良い傾向だと感じます。

まとめ

利用者にとってはメリットがあるため、ふるさと納税額が拡大して来ていますが、返礼品目的による納税による影響は年々大きくなってきており、歪み・ひずみも生じています。

現状はふるさと納税を行って、ふるさとに貢献しながら節税・節約するほうがお得になってしまっていますが、消費活動全体を見たときに、消費をしない方が優遇されるという矛盾が生じてしまっています。

返礼品の上限額抑制が総務省から通知される中、工夫を凝らした返礼を準備する自治体も出てきているので、バラマキで税金を集めるのではなく、自治体独自の工夫・PRで税金を集める等、本来の趣旨から外れた矛盾のある内容が解消されていくことに期待したい。