ヤマト運輸の宅急便の運賃改定発表や、現場の労働改革が連日話題になっています。
ネット通販の一部業者では取引の打ち切りを通告されたところもあるとの報道が見られ、個人客のみならず、大口の法人客も対象に交渉が行われている模様です。
自身も2017/4頭に購入したネットショップで再度商品を購入しようとしたところ、1週間もたたない間に運賃改定が行われていたので、通販業者にも運賃値上げの影響が出始めているようです。
ここまで問題となった理由の1つである、運賃自体が適切でないことについて考えてみました。
大口の契約事業者はコスト以上に割引を受けている場合あり
発送個数の多い契約事業者の荷物を受けるメリットは色々ありますが、契約事業者ならではの立場でヤマト運輸側に大きく貢献できていることは、集荷の効率化、システムと連動した印字伝票の作成、支払いの効率化(掛売り契約)といった部分にあります。
普段宅急便を利用しないお客さんがたまに1つの荷物を集荷発送するのと、毎日利用する大口顧客が1回の10個、20個という単位で集荷発送するのでは、どちらが効率的かは説明不要かと思います。
加えて、ヤマト運輸の場合は主に個人の顧客向けにクロネコメンバーズというサービスがあり、ヤマト運輸のシステムと連動した印字伝票を作成することで、会員登録済みの受け取る側は宅急便が届く前日にメール等(お届け予定eメール)で通知を受け取ることができる。
通知が届いた段階で受け取りの都合が悪ければ、配達日時を変更したり、営業所での受け取りに変更することができ、再配達となる割合を減らすことに貢献できます。
手書きの複写式伝票の場合、お届け予定eメールが利用できなくなってしまうので、受け取る側が到着予定を事前に把握できていなければ、再配達になる可能性が高まります。
最後の掛売り契約に関してもこれまた説明不要で、支払回数が月1回に、口座引き落とし契約済みであれば、後日自動で支払いが完了するのに対し、都度代金を徴収すると1回あたり1、2分は余分に時間がかかります。
こういったところでの貢献が積み重なって、契約運賃は安くなっていると思われます。
(他にも荷主側の梱包不足による事故率や、発送地域・サイズといった内容も関係していると思われます)
一方で、荷物を受けて担当の営業所から受け取るお客への発送の部分は、どの業者もほとんど一律のコストがかかってきます。
Amazonを中心に話題となっていますが、荷物を多く運んでも利益が出ないのであれば、ここまで説明した要因以上に値引きを受けた契約運賃となっている可能性が高くなります。
引き受け後は再配達を除き発送コストにほとんど差が生じないため、大口の法人客(1000社ほどと報道されています)を対象に、適正な運賃への改定(値上げ)のために交渉が行われているように思います。
個別の状況を把握するのは難しいですが、Amazonとの交渉がどうなるかに着目しておけば大きな流れの把握には困らないでしょう。個人的にはAmazonの契約運賃を改定する、あるいは契約打ち切りするだけで、大きな効果が見込めるのではないかと思っています。
個人客の運賃改定はヤマト運輸への貢献度次第に!?
個人向けの今回の運賃改定(値上げ)について、今回は詳しく説明しませんが、ヤマト運輸への貢献度(負担・コスト軽減)が反映されるようになったのではないかと思います。
事業者とも比較しながら、個人客の荷物が値上げされる・高くなっている理由についても考えてみたいと思います。
伝票番号の通知率が下がり受け取りに影響
個人的な体験に基づくものであるが、楽天市場などではなくヤフオクやフリマアプリなど個人の方から購入すると、伝票番号が通知されずに届くことがあります。
メルカリやラクマなんかはアプリ上で発送したことを連絡することもあり、伝票番号を通知しない方も多いのではないかと思います。
伝票番号が分かれば再配達を依頼しやすくなるばかりではなく、配達時間を変更でき再配達になる可能性を減らせるので、コストにも影響してきます。
必ずしも個人の方のみとは限りませんが、伝票番号の通知率に関しては個人の発送主の方が低く、わずかながらでも影響があるのではないでしょうか。
破損の割合が高まる
これも可能性にとどまっているかもしれませんが、ネット販売のプロと個人では破損の割合が異なっていてもおかしくなく、一般的には慣れていない個人の方が荷物の梱包状態が関与する破損が多く、補償が適用されるにせよ、かかるコストは相対的に高くなるように思います。
運送中の荷物の取り扱いに関する事故に関しては差が少ないと思いますが、フリマアプリで誰でも匿名で簡単に販売できるようになってきているので、良くない梱包のまま差し出す個人の方も増えてきていておかしくはないと思います。
支払の都度個別の支払いを行うためにコスト高
荷物を差し出しに営業所へ行くと、意外と支払いで待たされることがあります。
またセールスドライバーに毎回現金で支払いをしていると、おつりやらなんやらで意外と時間がかかってしまうものです。
対応しているのはヤマト運輸の従業員なので、対応が必要な分コストがかかります。
営業所へ荷物を出しに行く際、フリマアプリ関連のお客さんも良く見かけるようになりましたが、これまでの発送経験がない方への対応時間が長くなったり、人件費の上昇もあって対応コストも上昇してきていると思われます。
事業者であれば支払いのやり取りは不要なので、この部分の影響は少ないと思いますが、当然個人の場合は運賃の改定にも反映されているものと思われます。
受け取り側での再配達が多くコスト増
これは個人の料金に直接反映というわけではありませんが、毎回確実に受け取りができる事業者や個人、宅配ロッカーや営業所受け取りができる場合と、何度も再配達になる場合では当然配達に要するコストが異なってきます。
ネット販売の拡大で再配達率の割合が上昇していることも、当然宅急便の送料を押し上げる要因となります。
この部分は「宅急便センター直送サービス」という仮称でサービスの開始に向けて準備進められているようですが、再配達の有料化よりも、ヤマト運輸に貢献してくれた方に還元という形で差をつけるようです。
受け取る側が事業者の場合、1回の配達で大量の荷物を確実に受け取れるのであれば、やはりヤマト運輸に貢献していることになります。
再配達のコストがかかるのは個人利用者が多く、昨今の人件費の上昇も加味され、個人の送料値上げにつながっているのかもしれません。
まとめ
ヤマト運輸の運賃改定について考えてみると、安すぎて利益の出ない大口契約者の存在、個人客の発送、および受け取り時のコストと人件費の上昇が今回の改定のポイントではないかと思います。
再配達のコストについては、宅配ロッカーの整備も検討されているなど様々な報道がされていますが、具体的に決まっていない部分も多く利用者の貢献度に応じてどのように反映されるかは気になるところです。
大口契約者は受け取り時に再配達となるリスクが少なそうなので、その分も発送時の運賃に反映されているのかもしれませんが、利用者が納得いくような運賃体系で今後の運賃改定が決着することを期待したい。